クワガタの飼育(ブリード)
 捕まえたクワガタは大切に飼育します。成虫や幼虫を昆虫ショップで購入するのではなく、捕まえたクワガタを育てるのが、私の飼育のスタイルです。だから我が家には国産クワガタしかいません。マット、産卵木、飼育箱などの飼育用品は主にインターネットの通信販売(フジコンなど)やホームセンターで購入しています。 
 成虫の飼育のために、飼育ケース、マット、クワガタの餌が最低限必要です。オス同士の争いを避けるために、オス1匹とメス1-2匹程度で飼います。メス同士が争うことは少ないです。野外で採取したメスはオスを入れずに育てても、すでに交尾が終わっていることが多く、そのまま産卵が始まります。ケースのフタには新聞紙や専用のシートをはさんで、湿度を保つと同時にコバエなどが入らないようにします。ただし、新聞紙は破れやすいので、専用シートをお勧めします。クワガタがアゴで穴を開けたら新しく交換します。横に縦にすきまのあるケースは乾燥しやすく、すぐにコバエが入りますのでクワガタの飼育には良くありません。
新聞をはさみました。 防虫・保湿シートを使うときは、ケースの大きさより少し大きく切って使います。 すきまがあるケースは使いにくいです。
 飼育ケースは、夏は直射日光が当たらない、涼しい場所に置きます。ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、アカアシクワガタ、スジクワガタなどは、高温が苦手です。ケースが暑くならないように気をつけます。特にミヤマクワガタは、クーラーのある部屋に置くなど、暑さ対策をしないと長生きしません。
 秋から翌年の春までは低温にして冬眠させるか、ヒーターを使って飼育ケースを25℃前後に温めます。ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタなどは寒くなると死んでしまいますので、ヒーターを使って長生きさせたいです。
 マットは、幼虫と成虫を飼うために粉々にした木です。クヌギやコナラのマットが適しています。発酵させたものを発酵マットといって、幼虫がよく育ちます。マットはホームセンターなどで安く購入できます。インターネットの通信販売では、本格的なマットが購入できます。マットは手で握ってくずれない程度に水を加えます。飼育ケースにマットを3分の2程度入れます。表面が乾いてきたら霧吹きでしめらせます。
保温のヒーターを使います。 特売のフジコン社マット。 くずれない程度に加水します。
 クワガタの餌は、昆虫ゼリーが扱いやすく、1週間に1回以上交換します。バナナ、パイナップル、リンゴもよく食べます。安売りの果物を買ってきて、皮ごと切って飼育ケースに入れてやると、夜になると出てきてうれしそうに食べていますので、昆虫ゼリーよりも感動が大きいです。
 コクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタなどの産卵のためには、産卵木を入れて産卵させます。フジコンなどのインターネットの通信販売で、良質な産卵木を販売しています。産卵木は、半日ほど水に沈めて、半日ほど水をきって使用します。私は、時間がないときは、2時間ほど水に沈めて、少し水をきって飼育ケースに入れています。産卵木の樹皮をはがすと産卵しやすく、はずした樹皮はクワガタの隠れ場所にします。樹皮はマイナスドライバー(ねじまわし)で簡単にはずせますが、軍手をはめた方がいいです。飼育ケースに産卵木を横に置き、そのまわりに加水した発酵マットを産卵木がわずかに表面に出る程度まで固く詰めます。表面のマットは成虫が隠れやすいように1センチくらい軽く詰めます。
 ミヤマクワガタ、ネブトクワガタはマットに産卵しますので、産卵木は必要ありません。メスの隠れ場所として産卵木を埋めることもあります。
 マットの交換は、幼虫が孵化(ふか)する時期を避け、秋になってから行います。うまく行けば産卵木に幼虫が誕生しています。産卵木はマイナスドライバーを使って、ていねいに割ってゆきます。
軍手とドライバーを用意。 産卵木に穴があいています。 幼虫がいました。 卵も見つかります。
 コバエが発生したら、早めにマットを交換します。夏には霧吹きを使ってマットを加水します。冬も時々加水が必要です。
 幼虫の飼育のために、発酵マットや菌糸瓶を使用します。発酵マットを使うときは、クワガタ飼育用の容器、インスタントコーヒーやジャムなどの空き瓶、大きめのタッパーに発酵マットを固く詰めます。人間の手はバイ菌が多いので、幼虫には直接手で触らないようにして、スプーンなどでやさしく1匹ずつ容器に入れます。1令幼虫や2令幼虫は小さな容器で十分です。3令幼虫はたくさん食べますので、大きな容器を使います。
タッパーも使います。 ジャムの空き瓶です。 菌糸瓶の容器を再利用し、発酵マットを固く詰めます。
 菌糸瓶は1個300円ほどで費用がかかりますが、成虫が大きく育ちます。発酵マットや菌糸瓶は、3から4か月(秋と冬くらい)で詰め替えます。菌糸瓶の管理をおこたるとヒラタケが生えてきて、周りがヒラタケの胞子で真っ白になり、部屋にキノコのにおいがただよいます。私はこのにおいをかぐと、気分が悪くなります。
菌糸瓶にキノコが生えました。 上のキノコをとります。 幼虫と幼虫のフンを入れます。
 ネブトクワガタは発酵が進んだマットを好みます。ミヤマクワガタは腐葉土のようなマットが良いようですが、まだブリードに成功していません。
 幼虫がサナギになり、成虫になったところを掘り出すのですが、タイミングが大切です。前蛹で取り出して飼育瓶に入れると、フタの下で蛹化と羽化が始まります。成長の観察には最適ですが、うまく育つかどうか心配です。サナギの状態で取り出すと、サナギになる前に作った蛹室(ようしつ)というサナギの部屋を壊してしまいます。マットを固めて蛹室を作るか、人工蛹室を用意しないといけません。フラワーアレンジメントで使うオアシスという緑色の固いスポンジのようなもので作ることができます(私は作ったことがありません)。

クワガタ飼育の経緯
2000年 コクワガタの飼育を始めました。
2001年 飼っていたコクワガタから思いがけず2世が誕生して驚きました。
2002年 コクワガタの幼虫が何匹も死んでしまいました。飼育箱のマットや朽ち木を交換しなかったため、食べるものが無くなったのだと思います。
2003年 コクワガタを1匹ずつ飼育瓶に移したところ、8割近くが生存し成虫になりました。
2004年 ブリードしたコクワガタから3世の幼虫が誕生しました。ネブトクワガタの幼虫も新しく加わりました。ノコギリクワガタが成虫になりました。
2005年 ネブトクワガタが成虫になりました。ヒラタクワガタのブリードに成功しました。
2006年 コクワガタ、ノコギリクワガタ、ネブトクワガタ、ヒラタクワガタを幼虫で越冬させました。コクワガタ、ネブトクワガタ、ヒラタクワガタは夏にたくさん成虫になりました。夏に温度・湿度管理が悪く、ネブトクワガタの次世代は誕生しませんでした。
2007年 コクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタの幼虫が誕生しました。
2008年 アカアシクワガタのメスを飼いましたが、幼虫は誕生しませんでした。
2009年 アカアシクワガタとミヤマクワガタのメスを飼育し、ミヤマクワガタの幼虫が誕生しました。
2010年 アカアシクワガタの幼虫が誕生しました。スジクワガタの飼育を始めました。ミヤマクワガタの幼虫は暑さのためかサナギになる前に死んでしまいました。
2011年 アカアシクワガタが成虫になりました。スジクワガタの幼虫が誕生しました。
2012年 スジクワガタが成虫になりました。コクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、アカアシクワガタの飼育を続けています。
2013年 島根県産ヒラタクワガタのブリードに成功しました。
2014-2015年 コクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、アカアシクワガタの飼育を続けています。
2016年 ミヤマクガワタのメスを飼育し25匹の幼虫が誕生しました。
2017年 ミヤマクワガタの幼虫のために冷温庫を購入し夏を乗り切りました。
2018年 冷温庫で育てているミヤマクワガタの幼虫が成長し、とうとうサナギになりました。

スジクワガタ <条鍬形> Dorcus striatipennis
 2008年夏、標高700メートルの川沿いに生えているタチヤナギでスジクワガタを初めて見つけました。2009年には標高480メートルの場所でスジクワガタのつがいを見つけ飼育しましたが、暑さのためか早く死んでしまいました。2010年7月にも同じ場所でつがいを採取しました。アカアシクワガタと同じように屋外で直射日光が当たらず、風通しの良い場所に飼育ケースを置き、ぬれた布をケースにかぶせて飼育しました。2011年11月に産卵木を崩すと、幼虫が誕生していました。2012年7月に羽化して成虫になりました。
コナラの幹につがいを見つけました。(2010年) 産卵木割ると幼虫がいました。(2011年) ブリードに成功しました。(2012年)

アカアシクワガタ <赤脚鍬形> Dorcus rubrofemoratus
 2009年夏、標高700メートルの川沿いに生えているタチヤナギでアカアシクワガタのつがいを捕まえました。ミヤマクワガタと同じように、屋外で直射日光が当たらず、風通しの良い場所に飼育ケースを置き、ぬれた布をケースにかぶせて飼育しました。2010年7月に3本の産卵木のうち1本を少し崩すと4匹の幼虫が現れました。そのまま新しいマットに埋めました。アカアシクワガタの幼虫は初めてでした。2011年11月に飼育箱を見ると少なくとも6匹の成虫が誕生していました。
ヤナギの枝につがいを見つけました。(2009年) 産卵木にたくさんの幼虫がいました。(2010年) アカアシクワガタの成虫が誕生しました。(2011年)

ミヤマクワガタ <深山鍬形> Lucanus maculifemoratusNew
 2009年夏、道路の外灯の下で2匹のミヤマクワガタのメスを見つけ飼育していました。ミヤマクワガタは高温では産卵しないということでしたので、屋外で直射日光が当たらず、風通しの良い場所に飼育ケースを置き、ぬれた布をケースにかぶせていました。9月にマットの交換をしたときに卵を見つけました。卵は孵化して、幼虫になり、カブト用のマットで幼虫を育てましたが、夏を乗り越えることができませんでした。暑い環境では飼育が難しく、ミヤマクワガタのブリードには成功していません。
 2016年7月、コンビニエンスストアの明かりに飛んできたミヤマクワガタのメスを見つけ飼育を始めました。25匹の幼虫が誕生しました。冷温庫を購入し温度を23℃に設定し夏を超えることができました。2018年8月にサナギになりました。成虫の誕生を待ちたいと思います。
島根県産のメス(2016年7月) 幼虫が誕生しました。(2016年10月) 幼虫が育っています。(2017年5月)
プラスチックのカップに移しました。(2017年7月) 冷温庫を夏を乗り切りました。 サナギになりました。(2018年8月)

コクワガタ <小鍬形> Dorcus rectus rectus
 2001年に初めてコクワガタの2世を誕生させました。その後も試行錯誤を重ね、今ではコクワガタの飼育は簡単だと思えるようになりました。
 2003年に飼育瓶に1匹ずつ移した結果、2004年には多くの幼虫が大きな成虫になりました。飼育瓶はインスタントコーヒーの空き瓶、大きめのタッパー、クワガタ専用の飼育瓶を使いました。2004年5月31日にその年最初のコクワガタが羽化して成虫になりました。
飼育箱の朽ち木を割った(2003年11月) サナギ♀(2004年5月) サナギ♂(2004年5月)
羽化直後♂(2004年5月31日) 羽化直後♂(2004年6月2日) 成虫♂(2004年7月2日) 成虫♀(2004年7月9日)
 2004年のワイルド種(野生種)から誕生した幼虫を取り出しました。約40匹の幼虫が新たに誕生していました。2003年愛媛県鬼北町で採取し越冬したコクワガタから誕生した幼虫は約30匹になりました。また、ブリード種(飼育種)から3世の幼虫が誕生しました。2004年秋以来、冬に100匹以上のコクワガタが幼虫で過ごしています。
2004年ワイルド型から幼虫が誕生し飼育瓶に移す(9月5日) 越冬した成虫から誕生(11月7日)
 2006年は成虫約50匹、幼虫約100匹と多くのコクワガタが我が家で暮らしました。数が多くなると飼育スペースがせまくなり、コクワガタが良い環境で過ごすことができなくなりました。
羽化直後のコクワガタ♀ しばらくたつと羽の色が濃くなった。

ノコギリクワガタ <鋸鍬形> Prosopocoilus inclinatus
 2003年に愛媛県鬼北町で捕まえたメスから幼虫が6匹誕生しました。幼虫はコクワガタに比べて頭部のオレンジ色が濃く、サイズも大きいという特徴を持っていました。2004年9月9日、発酵マットのサナギが羽化し、9月20日に取り出したところノコギリクワガタであることが判明しました。12月12日、メス2匹、オス1匹が誕生し、3令幼虫が1匹になりました。
1令幼虫をジャムの瓶に入れた(2003年11月) 3令幼虫(2004年6月)
マットを交換(8月上旬) 蛹化した(8月下旬) 羽化した(9月9日)
ノコギリクワガタ ♂(50 mm)が現れた(2004年9月20日)
サナギの殻がついている ♂45 mm ♀30 mm 3令幼虫で越冬(12月12日)
 2004年は愛媛県愛南町の僧都川の橋の外灯に飛来したノコギリクワガタのメスから9匹の幼虫が誕生し、2005年に成虫になりました。
飛来したメス(2004年8月) 1令幼虫を発見(2004年11月) 菌糸瓶に移した
 2005年5月29日ノコギリクワガタが交尾を始めました。オスはメスを奪われないように抱えています。ノコギリクワガタはオス同士はお互いを攻撃し、時には相手を殺してしまいます。オス同士は一緒に飼わない方がいいようです。
ノコギリクワガタのオスがメスを抱えている
 2005年7月、ノコギリクワガタが瓶のフタのところで蛹化しました。前蛹から羽化するまでの様子を観察しました。羽化直後は赤みが強くきれいでした。
7月3日(蛹化8日前) 7月7日(蛹化4日前) 7月9日(蛹化2日前) 7月10日(蛹化前日) 7月11日(蛹化日)
7月12日(2日目) 7月15日(5日目) 7月17日(7日目) 7月20日(10日目) 7月29日午前8時(19日目)
7月29日午後11時(19日目) 7月30日午後2時(20日目) 7月30日午後8時(20日目) 7月31日(21日目) 8月5日(26日目)

ネブトクワガタ Aegus laevicollis laevicollis
 2004年、愛媛県愛南町の公園でネブトクワガタを捕まえました。メスは8月の終わりに死んでしまいましたが、9月初めに飼育箱の底に1令幼虫を見つけました。
 ネブトクワガタの幼虫は発酵が進んだマットを好みます。菌糸瓶の残りと古い発酵マットと新しい発酵マットを混ぜて特製のマットを作りました。9月18日にネブトクワガタ用のマットに移しました。ネブトクワガタは幼虫を1匹ずつ飼育瓶に入れず、飼育ケースで多数の幼虫を飼っても大丈夫なようです。成虫はせまいところだと、けんかをするようです。
 12月12日マットの交換をしたところネブトクワガタの幼虫が11匹がいました。2005年7月2日すべてが成虫になったのを確認しました。オス7匹、メス4匹で最大のオスは29 mmでした。
 ネブトクワガタはカナブンと同じように繭玉(まゆだま)を作りその中でサナギになり成虫になります。
ネブトクワガタ♀がいた林 ♀ 16 mm ♂ 21 mm
1令幼虫 マットに移した(2004年9月) 3令幼虫に成長(2004年12月) 3令幼虫(2005年2月)
ブリード♂ 29 mm ネブトクワガタの繭玉 ブリード♂ 26 mm ブリード♂
 2005年、11匹の成虫が次世代の幼虫を誕生させ、2006年は25匹の成虫が誕生しました。1匹のメスから生まれた子孫で継代飼育を続けています。
ブリード♂ 20 mm (2006年)
 2006年の成虫は、環境が悪かったためか、幼虫の誕生はありませんでした。たくさんの成虫も1匹のメスを残して死んでしまいました。愛媛県愛南町で捕まえた1匹のメスから始まったネブトクワガタの累代飼育は、残念ながら3年で終了しました。

ヒラタクワガタ Dorcus titanus pilifer
 2004年9月、愛媛県愛南町の僧都川の橋でヒラタクワガタのメスを見つけました。そのメスから2005年7月9日ヒラタクワガタのオスが誕生しました。初めてのヒラタクワガタのブリード成功です。ヒラタクワガタのメスは越冬して、2005年も子供を産み、その子は1年で成虫になりました。短期間で成虫になったためサイズは小さいです。生育条件が悪いときには小さな個体を早く誕生させ、種の保存を図っているのだと思います。ワイルドタイプ(野生)ではオスでも30 mm程度のヒラタクワガタがいます。
 ヒラタクワガタのオスはとてもけんか好きです。オス同士はもちろんですが、オスとメスも長く一緒に暮らしているとメスを殺してしまうので、交尾が終わったと思ったら(1週間程度で)、その後は別々にするのがいいようです。ヒラタクワガタのアゴの力はとても強く、はさまれたら思わず声をあげてしまいます。
親虫♀(2004年9月)
3令幼虫になったばかり 立派な3令幼虫
ブリード♂ 57 mm (2005年) ブリード♂47 mm (2005年) ブリード♀30 mm (2005年)
 2006年には18匹のヒラタクワガタが成虫になりました。成虫までの期間は1年間でした。我が家ではこれまで最大の65mmのヒラタクワガタや雌雄一体のヒラタクワガタなどが誕生しました。
ブリード♂ 65 mm (2006年) 雌雄一体のヒラタクワガタ (2006年) ヒラタクワガタ♀ (2006年)
 2007年は、2005年に成虫になったクワガタが次世代を誕生させました。65mmを超える成虫を目指して菌糸瓶に幼虫を入れました。菌糸瓶は1つ300円くらいします。3カ月に1度くらい交換が必要ですので少し高くつきます。
産卵木を崩すとヒラタクワガタの卵がありました。(2007年) 1令幼虫も見つかりました。(2007年) 菌糸瓶で大きなヒラタクワガタを目指します。

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