凡才クライマーまこと君の山行記録

凡才クライマーまこと君は近所の岩場で細々と山行しています。その幾つかを紹介します。

白滝山(山口県)
西壁

“山岳猟兵”
『岳人』660 2002年06月号掲載
“エーデルヴァイス”
『岳人』664 2002年10月号掲載
南西壁
“パウケンシュラーク”
『岳人』701 2005年11月号掲載
“ドラムビート”
『岳人』701 2005年11月号掲載
“壊れた太鼓”
『岳人』701 2005年11月号掲載
東面
“スカパフローの雄牛”
『岳人』673 2003年07月号掲載
“灰色狼”
『岳人』673 2003年07月号掲載

ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“鋸鮫”
『岳人』686 2004年09月号掲載
“3匹の魚”
『岳人』686 2004年09月号掲載
“シュネーマン” 『岳人』722 2007年08月号掲載
“赤い悪魔” 『岳人』
722 2007年08月号掲載
“黄金の蹄鉄” 『岳人』
722 2007年08月号掲載
“タツノオトシゴ” 『岳人』
722 2007年08月号掲載
“4枚のエイス” 『岳人』
722 2007年08月号掲載
“黒い悪魔” 『岳人』
722 2007年08月号掲載

飛行機山(広島県)
“降下猟兵”
『岳人』690 2005年01月号掲載
“緑の悪魔” 『岳人』690 2005年01月号掲載

傘山(広島県)
“ブラック ピット” 『岳人』690 2005年01月号掲載
“コンボイ”
『岳人』690 2005年01月号掲載
“エニグマ” 『岳人』690 2005年01月号掲載



白滝山(山口県)西壁
“山岳猟兵”

5ピッチ W、V+、W+、X、X+
単独



2002年01月31日、2002年04月26日

始めに
山口県東部に白滝山という、標高こそは低い(458.6m)が、大きな(と言っても最長150m程)スラブを伴った山がある。昔は多少登攀されていたようだが、最近はあまり登られてはいないようである。春から秋にかけては取付までのブッシュが酷いと考えられたので、敢えて冬にルート工作を行った。
尚、本ルートは当初(2002年01月31日(木))“ストロングアーム(仮称)(3ピッチ W+、X、X+)として一応完成。これまで1ピッチの単独でのルート工作は何本も行ってきたが、マルチ-ピッチ(と言っても3ピッチ)のそれは今回が初めてであり、充実感、達成感とも格別のものがあった(ただの自已満足)。世界には数十ピッチのロングルートが有り、クライミング(特にフリー クライミング)のグレイドが5.15に突入したこの21世紀、「たかが3ピッチのX+のルートなんか意味あんのか?」と言う向きも有ろうが、「自已満足の趣味の世界に意昧づけなんかいらん!」と敢えて開き直っておこう。名言(迷言?)にも有るではないか『人類にとっては小さな一歩だが、一人の人間にとっては大きな飛躍だ』。
その後、下部岩壁に更にルート工作の余地が認められた為、後日(2002年04月26日(金))更に2ピッチ(W、V+)追加し、計5ピッチとして最終的に完成した。

2002年01月31日(木)
早起、寒さ、そして困難の嫌いな(好きなのは快適さだけの)真は、日も高くなり始めた7:50登山口を出発(この遅出が後で「功を奏す」ことになる)。よく整備された登山道を一路、山頂に向かう。30min程登った所で「ここら辺だろう」と大体の見当をつけて道から外れ、ブッシュに分け入る。出だしの100m程は大した藪でもなかったが、次第に壮絶な藪こぎとなる。特に目指す岩壁が近づき、傾斜がきつくなってからが大変。胸まであるシダを掻き分け、足を取られ、おまけに舞い上がった胞子で呼吸困難となる有様。結局岩場に辿り着くのに更に1h以上かかってしまった(この「時間の浪費」が後で「功を奏す」ことになる)。
1ピッチ(最終的には3ピッチ) 30m W+ ランペ〜段違〜スラブ ボルト×3
岩に取り付いてまず驚いた。乾いていれば快適に登れそうなスラブなのに、浸み出しが凝固してベルグラになっている!ひょっとすると西壁全体がこんな感じか?これは「帰れ!」ということか(「帰れ!」と言われなくても、困難な登攀は遠慮するが)?暫く躊躇した後、日も高くなってきたことだし、そろそろ融解するだろうと思い直す(願望する)。直ぐ右上の草付ランペなら何とかなりそうなので、取り敢えず行けるところまで行ってみることにする。少し登ってみると、この草付がまた凍り付いている(ベルグラが出来ているくらいだから草付が凍り付いているのは当たり前)!凍り付いた土に指を突き刺すようにして登ると、数mで手の感覚が無くなってしまった。困難な登攀を目指している訳でもないのに…。ランペから横クラックに移るところに潅木があり暫しレスト。手をマッサージしながら「やっぱり今日はやめにしておこうか?もっと条件のいい日に出直そうか?何と言っても快適な登攀が一番!」と自問するが、もう少し時間が経つと融解するだろうとまた思い直し(切望し)、横クラックからスラブに這い上がる(W+)。途中「何で石ころが落ちてくるんだ?」と思っていたら、氷柱のかけら!困難な登攀を目指している訳ではないのに更に困難が文字通り「降り掛かる」。段違(W)を乗り越すと乾いた快適なスラブ(V)(こうゆう登攀がしたかった!)。比較的広く、安定したブッシュバンドに入ってからピッチをきり、クリーニングを終えてから休憩。ストレスのためか食欲が無く、「どうせこんなことになるだろう」と予め甘目に調合しておいたコーヒーだけを摂る。
2ピッチ(最終的には4ピッチ) 30m X ルンゼ〜段違〜スラブ ボルト×5
著干脆く、絶ったルンゼ(W+)から登攀再開。スタンスが崩れ落ちるかもしれないという恐怖心の為短い間隔でボルトを連打。右のすっかり乾いたスラブに出るとすっきりした上部が見渡せる。風も無く、気温も高くなり快適な登攀日和(これよ、これ!)。朝のベルグラ、凍土、氷柱が嘘のようだ。段違を越え(X)草付バンドに這い上がると一息つく。比較的傾斜のあるスラブを浅いクラック(X)から、「落ちてもバンドで止まって笑い話で済むだろう」と少々ラン・アウトするが、これくらいの傾斜で5m程も中聞支点が無いと「蚤の心臓」が激しく鼓動し始めたので「精神安定剤」のボルトを1本打つ。通算8本目ともなると、いい加減腕も疲れてくるが、そこはいつもの「呪いの呪文」を唱えながら踏ん張る。傾斜の落ちた快適なスラブ(V)を抜け、右斜上した広いブッシュバンドに入りピッチをきる、不安定で居心地が悪いので、1ピッチ目の終了点まで降り休憩。相変わらず食欲が無く、コーヒーだけ摂る。
3ピッチ(最終的には5ピッチ) 30m V+ スラブ (ボルト×3(絶ったスラブ×2、緩い×1))
絶ったスラブをまともに直上しようとすると、延々とボルト連打になりそうだ。手持ちのボルトも残り少なく(5本)、腕も萎えてきたので、ブッシュバンドを暫く右斜上し、やや傾斜の落ちた辺りからルートを取ることにする。出だしにボルトを1本打ち終え、登り始めた時に足場の草付が剥がれ、敢え無くフォール。‘SILENTPARTNER’がしっかりと止めてくれる。「寒い」だの「早帰ろう」だの無駄口叩かず、やるべきことをきちんとやる頼もしいヤツだ(あと荷上、クリーニングまでしてくれるともう言うこと無いのだが)。気を取り直して登攀再開。ホールドが細かく、なかなか厳しい。もう1本ボルトを打ち足しやっと抜ける(X+)。この頃から風雪が始り、冷えてくる。「今日の天気予報は晴れじゃなかったんか?!」困難な登攀を目指している訳でもないのに更に更に困難が吹き荒れる。上部は若干ザラついてはいるが、極端に傾斜が落ちる(V)。しかし20mもラン・アウトする「勇気」も「図太さ」も持ち合わせておらず、ボルトを1本追加する。遂に主稜線直下のブッシュに入りルート工作完全終了!
クリーニングを終え、ロケイションも良く(風雪がまともに当たる!)、大休止としたいところだが風雪がますます激しくなってきたのでコーヒーだけ摂った後下山する。

2002年04月26日(金)
下部岩壁から新たに4ピッチ程度のルート工作をするつもりで入山したが、(予想通り)下部岩壁は滲み出しが酷く、当初目的としていた下部岩壁右側に取り付けず、“ストロングアーム(仮称)の下部に当たるであろう下部岩壁左側から取り付くことにする。この時点で「4ピッチ程度の新ルート工作」の‘野望’は漬えたが、3ピッチの“ストロングアーム(仮称)に新たにピッチを追加するという新たな目標が出来た。
1ピッチ 20m W カンテ〜スラブ ボルト
カンテの右のフェイスから取り付き、この出だし(ボルト×1)から3m程が核心部(と言ってもW)。続いて階段状のカンテ(V)を暫く登ると、段違いになった、プロテクションの取れ無いスラブに出る。ボルトを1本打ち、「エイッ」と立ち込み(V+)(右から回り込むと(V-)、後は傾斜の無いスラブをペタペタと歩いてブッシュ帯に入り、ピッチを切る。
2ピッチ 35m V+ 階段状フェイス〜スラブ〜スラブ状カンテ ボルト×3 
階段状フェイスをトコトコ登る(V-)。とは言っても支点がないと気持ち悪いのでボルトを1本打っておく。続いて傾斜の無いスラブをペタペタと歩く(V-)。やはり支点がないと気持ち悪いのでボルトを1本打っておく。その上の少し傾斜の出たスラブ状カンテ(V+)を、更にボルトを1本打ち、登り切ると、予想通り旧1ピッチ目の取付のブッシュ帯に出る。これで“山岳猟兵”は5ピッチのルートとしてリニューアルされた!
尚、当日は時間的に余裕があったので、引き続き上部の岩壁に2ピッチ(X+、X+)のルート工作を行い(「演習」し)、下山。


白滝山(山口県)西壁
“エーデルヴァイス”
 
4ピッチ X-、X+、X、X+
単独

2002年03月20日

“ストロングアーム(仮称)(3ピッチ)で「味をしめた」真は自宅近郊の比較的小さい(15m程度)岩場で更に「戦術」的ノウハウを蓄積した後、再び白滝山西壁に赴いた。ブッシュが多く滲み出しが予想されたので、快適な登攀を目指す真は、今回は5日程晴天が続いたのを見計らって入山した。似下はその記録である。尚“エーデルヴァイス”のルート名は山岳猟兵のエンブレムから採ったものであり、某登山用品メイカーの宣伝をしている訳では無い。
1ピッチ 35m カンテ〜段違〜フェイス〜凹角状ルンゼ X+ ボルト×4
西壁末端の若干ゴチャゴチャしたフェイスより取り付く。「弱点」を狙っていくとV程度になってしまいそうなので、やや変則的なラインを採った。出だしは絶ったカンテ(X-)(右から回り込むとV)、用心のためボルトを1本打ってから乗り越す。お次は段違い(W-)(右から回り込むとV-)、やはり用心のためボルトを1本打ってから乗り越す。緩い階段状のフェイスを暫く登ると爽快そうなカンテが立ちはだかるが、予定外の濠み出しの為、右の凹角状ルンゼに逃げる。今回もまた困難が続くのか?こちらもやはり濡れてはいるが、登られ無くもなさそうだ。が意外に悪く(W+)、更にボルトを2本打つ羽目になってしまった。
2ピッチ 35m フェイス〜バンド〜フェイス〜草付バンド〜スラブ X+ ‘Camelot’0.75 ボルト×3
出だしは絶ったフェイス(W+)。横クラックの入ったバンドに‘Camelot’の0.75を噛ませて立ち込むと一息着く。この上がまた絶ったフェイス(X+)。ボルトを1本打ち、腕ずくで越える。草付バンドに出ると傾斜は極端に落ちるが、ここでトラブル発生!メイン・ロウプが出て来ない!!それでなくてもルート工作中はカッカしているのに、更に血管が何本か切れ、「何で出んのんじゃ一」と一人悪態をつく。将があかないのでその場でボルトを1本打ち込み立木と併せてアンカーとし、メイン・ロウプをフィックス、バックアップロウプで一旦懸垂下降する。降りてみると整理しておいた筈のメイン・ロウプが‘SILENTPARTNER’に絡まっている!自然は全くケイオスだ。気を取り直して登り返し、残りのスラブ(V+)を更にもう1本ボルトを打ち片付ける。
3ピッチ 40m スラブ X ボルト×5
絶った微妙なスラブ(W)を、ボルトを1本打って登り、更に絶って更に微妙なスラブ(X)を更にボルトを2本連打し、外傾して不安定なスタンスに立つ。ここからは全体的に若干傾斜も落ち、表面も凸凹してくる(W-)が、一気にラン・アウトするか、念のためもう一本ボルトを打ち込んでおくか、大いに悩む。「更に上部のスタンスも外傾していて更にラン・アウトする羽目になったら…」結局小心者の真は、「ここでもし落ちてもストンと落ちる訳ではないし直ぐ下のボルトで止まるだろう」と悪い体勢でボルトを打つことにする。この、ムーヴの核心部を抜けてからの通算11本目、ほぼ連続で4本目のボルト打ちそのものが「隠れた核心部」。ただ単に通過するだけなら大して問題の無い外傾スタンスでも、そこに長時間(と言っても10min程度)踏みとどまり、だるくなった腕を振るうのはもはや「苦行」。いつもより熱を入れて「呪いの呪文」を唱え切り抜ける。上部は傾斜が極端に落ちたルンルン気分のスラブ(V)。ボルトを1本追加し、最後は巨礫(風化残留礫)の間を縫ってブッシュバンドに入り一息着く。
4ピッチ 20m スラブ〜段違〜ブッシュバンド〜クラック X+ ‘Camelot’3.0 ボルト×2
単調だがプロテクションの取れないスラブ(V)に1本ボルトを打ち(あまり効いていない)、更に段違(V+)にもう1本ボルトを打ち込んで(あまり効いていない)乗り越し、一旦ブッシュバンドに入る。目の前の巨礫(風化残留礫)はダイレクトに登るとA2になりそうなので、少し右に回り込んで縦クラックに‘Camelot’3.0を噛ませてレイバック気味に這い上がる(V+)。遂に主稜線直下のブッシュ帯に入りルート工作完全終了!
クリーニング終了後、天気もロケイションも良く、自已満足に浸って大休止。緊張感が一気に抜けたためか下山は疲労感が大きく、時々ふらついた。


白滝山(山口県)南西壁
“パウケンシュラーク”

5ピッチ W、V、X+、V-、V
単独



2004年12月22日

始めに
数日前のハイキングで気付いた岩場に、数度の「偵察」(草刈)の後、何時もの様に単身乗り込み5ピッチのルートを作った。何年も前から「見え」ていた筈なのに今までの気付かなかったのは我ながら大失態である。尤も上部岩「壁」は以前から気にはしていたが、その頃は「精々2ピッチのボロボロのスラブ」と過小評価していた。当初の予想通り比較的簡単に抜けた。下山は通い慣れた縦走路になることもあり、緊迫感が欠如、まるで「演習」のような登攀であった。

登山口の駐車場から縦走路を30min程登り、ブッシュ帯を一気に150m程下る。スラブ末端から登攀開始。
1ピッチ 30m W スラブ ボルト×6(ビレイ点×2)
想像していた通り滲み出しが酷く、なるべく乾いた所を選んで登る。ベルグラになっていないだけまだましではあるが…。それでも靴先、指先は直ぐにジンジンしてくる。ロウプ半分以上登った草付バンドで、更に上部のスラブを一気に抜けてブッシュ帯迄ピッチを伸ばすかどうか悩むが、ロウプ(40m)が足りるかどうか不安なので、此処で一旦ピッチをきる。自信の無いことはやらないのが大原則である。
2ピッチ 20m V スラブ ボルト×2
スラブの、比較的凸凹があり、且つ潅木からプロテクションの取れそうな右側を登る。ブッシュ帯に抜けてみるとこのピッチは約20m。下の草付バンドで一旦ピッチをきっておいて良かった、良かった。小心なのは真の「取り柄」である。
3ピッチ 40m X+ スラブ ボルト×4
15m程のヤブコギ後、絶ったスラブ末端を何回かのトライの末乗り越す(X+)と、その先には爽快なスラブが続いていた!♪やっぱ、クライミングはこうでなくっちゃねー♪と鼻歌交じりに登る。丁度ロウプ一杯(40m)の所に松の潅木が生えており此処でピッチをきる。
4ピッチ 30m V- スラブ
3ピッチに引き続き爽快なスラブを鼻歌交じりに登る(歩く)。プロテクションは浅いクラックに生えた潅木から取る。
5ピッチ 35m V フェイス〜ブッシュ〜スラブ ボルト×4
簡単なフェイスを登り、数mヤブコギすると、最後のつまり最上部のスラブに出る。恐らくこの辺りが「精々2ピッチのボロボロのスラブ」の筈である。やはりザラついておりおろし金のようだ。「人間おろし」にはなりたくないので多めにプロテクションを取り(ボルト×4)、比較的硬そうな所を選んで登る。
岩場(ザレ場)を抜けた後、まだ時間的に充分余裕があった(15:30)ので白滝山山頂(458.6m)迄足を延ばし大休止。遅い昼食を摂った後、「楽しいだけクライミング」の後味を味わいながら下山。




白滝山(山口県)南西壁
“ドラム ビート”

6ピッチ V、W+、W、V-、V、V-
単独



2005年03月07日

スラブ末端の、“パウケンシュラーク”の左から登攀開始。
1ピッチ 20m スラブ ボルト×3
前回同様滲み出しが酷い。上部が手強そうだった為、“パウケンシュラーク”のアンカーをそのまま使って、一旦ピッチをきる。ボルト連打に備えて、今まで通算10本を打った錐も交換。
2ピッチ 30m W+ スラブ ボルト×5
比較的乾いた傾斜の緩いスラブから、濡れて且つ絶ったスラブを乗り越す。2,3本目のボルト打ちが今回のルート工作の核心部。登るだけなら簡単に立てる(簡単に通過出来る)が、長時間(といっても10min程度)止まってボルトを打つのは苦しい。「落ちる前に打ち込まなければならない」と必死でハンマーを振るう(尤も落ちたとしても擦過傷程度で済みまさか死ぬことは無いだろうが)。絶ったスラブの抜け口では腹這いになってのボルト打ち。泥水の飛沫を顔面に浴び、ヤッケを着ていても腹部がビチャビチャになる。こういう時に「生きている事を実感する」真は異常体質?ムーヴとしては、下からは見えなかった隠れたホウルドがチョコチョコあり、決して手強くは無かった(W+)。
3ピッチ 35m W 段違〜スラブ ボルト×2
15m程のヤブコギ後、岩場に取り付く。段違いの出だしが核心部(といってもW)、その上部は簡単だが爽快なスラブ。「クライミングをやっていて良かった」と思う一時。スラブのほぼ中間にある松の潅木でピッチをきる。
4ピッチ 35m V- スラブ ボルト×2
3ピッチに引き続き爽快なスラブを登り、ブッシュ帯に入る。
5ピッチ 30m V スラブ ボルト×5(ビレイ点×2)
左に10m程のヤブコギをし、最後のつまり最上部のスラブに出る。“パウケンシュラーク”からは随分(といっても10m)左に離れるが、「どうせ簡単な30m位のスラブだろう」と、ザックからボルトの補充はせずに登り始める(後で後悔する事になる)。下部は岩脈をホウルドにし、予想通り快適に登り始める。しかし余りにも調子よく登り過ぎ、あと5mでブッシュバンドに出る、と思い、そのまま進もうとすると、なんとロウプ(40m)が一杯!ブッシュに出るつもりでいたので既に手持ちのボルトはゼロ!ハーケンを打てるリスも無い!凡才クライマーまことくん絶体絶命!!取り敢えず最後に打ったボルト迄慎重にクライミングダウンしセルフビレイを取り対策を練る。手持ちの使えそうなギアとしては「困った時の補助ロウプシュリンゲ」が3本、長めのシュリンゲが3本、シュリンゲとして使える鐙が1セット。またスラブの右には所々ブッシュ。「うん、うん。これなら何とかなりそうだ」シュリンゲを継ぎ足しボルトに通し手掛かりとし、更にブッシュも使い、少しクライミングダウンしシュリンゲを回収。そしてその下のボルトでも同じような操作を繰り返し、繰り返しして潅木のある安定したバンド迄下る。アンカーにとしてボルトを2本打ちたいが、生憎下のザックの中。仕方が無いので潅木を使って懸垂下降。
6ピッチ 40m V- スラブ〜ザレ ボルト×4
ボルトを2本打ちアンカーを完全なものとして、改めて登攀開始。簡単なスラブ(V-)をもう一度登り今度は余裕を持ってブッシュバンドに出る。実質的な登攀は此処迄(20m)。此処から右のブッシュ帯に「逃げる」事も出来るがロウプが充分(20m)余っているので、このままザレ場をロウプ一杯まで直上し登攀を完全終了とする。
更に縦走路に抜けた後、白滝山山頂(458.6m)迄足を延ばし大休止(17:50)。遅い昼食(夕食?)を摂った後、反省しながら下山。

考察
4ピッチ迄は、“パウケンシュラーク”の先入観があった為、比較的簡単に(Xが一つも無い!)抜けた。そして5ピッチも余りにも調子よくルートをのばした為、ロウプ(40m)が一杯になって立往生するといった大失敗をしてしまった。自分自身に腹が立つ。結果的には事無きを得たのは唯単に運が良かっただけである。ツマラナイミス、「不運」が重なれば、たとえVのルートではあっても重大事故にも繋がり得る。これがアルパインクライミングの「面白さ」(危険)であろう。今回の場合でも直ぐ横にブッシュが無かったとか、クライミングダウン中に滑ったとか、更にミス、「不運」が重なってはいれば笑い話では済まなかったであろう。今回は計らずも6ピッチという自己最多記録を成し遂げ、嬉しさも無くは無いが、登攀としては「不合格」である。


白滝山(山口県)南西壁
“壊れた太鼓”

4ピッチ V、V、W+、V
単独



2005年03月31日

スラブ末端の、“パウケンシュラーク”の右から登攀開始。
1ピッチ 15m V スラブ ボルト×2
2日程晴天が続いた為、今日は完全に乾いているのではと淡い期待をしていたのだが、やはり今日も滲み出しが酷く、なるべく乾いた所を選んで登る。ロウプ半分程登った草付バンドで、更に上部のスラブとブッシュ、更にスラブとを一気に抜けてその上のブッシュ帯迄ピッチを伸ばすかどうか悩むが、前回(“ドラムビート ビート”)の「恐怖」が蘇り、此処で一旦ピッチをきる。
2ピッチ 35m V スラブ〜ブッシュ〜スラブ ボルト×2 ハーケン×1(回収済)
傾斜の緩いスラブからブッシュを抜け、濡れたスラブ。珍しくリスがありハーケンを素直に使う。スリップしないように慎重に此処を抜け、左上しブッシュ帯に抜ける。全く快適でないピッチ。終了点から20m程ロウプを引きずってヤブコギした後、3ピッチ目の取付。此処で昼食(12:25)。 
3ピッチ 40m W+ スラブ ボルト×5(ビレイ点×2)
スラブを快適に登ると段違(W+)。此処を乗り越えると傾斜が落ちる。この以前は爽快感を感じたスラブも、“パウケンシュラーク”“ドラムビート ビート”と続き3回目となると流石にもう何も感じず、唯の「演習」。ロウプ一杯(40m)迄のばすが生憎スラブのど真ん中。アンカーとしてボルトを2本打ち込みピッチをきる。
4ピッチ 30m V スラブ ボルト×1
3ピッチに引き続きスラブを登る。10m程直上し、ブッシュの生えたクラックを越えると極端に傾斜が落ちる。しかし其れなりに長い(約20m)ので、念の為2本目のボルトを打ち始めた所、急にハンマーが軽くなったかと思うと背後で「バサッ」と音がする。手にしたハンマーに何気無く目をやると何とシャフトが見事に破断しているではないか!!即ちさっきの音は「飛び去った」ヘッド部分及びシャフトの上部がブッシュに落下した時の音という事になる!暫く唖然と立ちすくむ。今日のボルト打ちには朝から何となく違和感(振動)を感じてはいたが、岩のせいだとばかり思っていた。後から考えると破断の前兆だったのだろう。今迄ヘッドの接続部分の止め具(ピン)が破断したことは数回経験があるが、シャフトその物が破断したのは今回が初めてである。簡単なペタペタスラブ(V-)であったのがまだ不幸中の幸い。気を取り直し、枯れ木で中間支点を取りブッシュ帯に抜ける。
ハンマーが無ければ最上部のスラブのルート工作(といってもV程度)は不可能なので、今回の登攀は不本意ながら中途半端なまま終了。時間的に(15:00)、体力的にも、その他の装備の面にも余裕があり、順調に行けば更に1ピッチを追加できた筈である。今回も「あわよくば5ピッチのルートになるのでは」と期待して登り始めた(真はマルチピッチが好み)だけに残念である。
「暇潰し」に前々回(2004年12月22日)写真を撮り忘れた“パウケンシュラーク”3ピッチの写真撮影を行い、更に白滝山山頂(458.6m)迄足を延ばし、不満足感を味わいながら下山。

考察
大遠征なら兎も角、ワンデイクライミングにハンマーの予備を持って行くのは現実的ではないだろう。もしハンマーの予備を持って行くのなら、ヘルメットの予備、ハーネスの予備、クライミングシューズの予備等々荷物がおよそ2倍になってしまう。運が悪かったと諦めるしかない。




白滝山(山口県)東面
“スカパフローの雄牛”
4ピッチ X、X+、V-、X+
単独

2003年03月10日

始めに
以前から気になっていた白滝山東面の岩稜に漸くこの冬、何時ものスタイル(単独)で登攀を行った。4ピッチ、X+の、ほぼ当初の見込み通りのルートとなった。

より子に♪アメアメ降れ降れよりちゃんが〜ピッチピッチチャップチャップランランラン♪と歌と踊りで送り出され、一路白滝山に車を走らせる。西側の登山口から縦走路を30min程登り、反対側の東面のブッシュ帯を100m程一気に下る。岩場の直ぐ上で登攀用具を身に付け準備。灌木から懸垂下降し岩稜の末端に降り、登攀開始。
1ピッチ 25m X フェイス〜バンド〜スラブ(クラック) ボルト×4
2ピッチ目が手強いことが予想されていたので草付ルンゼをさっさと登ってしまおうとしたが、1m程登った所で派手に草付が剥がれフォール。岩は泥泥になってしまったので2m程右のフェイスから登り直す(結果的にはこの方が面白いラインとなった)。ボルトを3連打し(X)(木を使うとW+)、バンドに抜けると一息つく。スラブを直上する(W+)と最初に懸垂下降した灌木に着く(右のクラックを登るとV)。
2ピッチ 40m X+ スラブ ボルト×6
灌木からボルトを5連打して絶ったスラブを直上(X+)。上部は傾斜が落ち、ホールドも多くなる(W-)。ブッシュ帯に入りピッチをきる。
3ピッチ 10m V- スラブ ボルト×1
傾斜のないザラザラしたスラブを直上する。尚、このピッチのルート工作はスリップしても草付にずり落ちるだけで、笑い話で済むので、‘SILENTPARTNER’は使用しなかった。
4ピッチ 40m X+ スラブ〜チムニー〜スラブ〜ランペ ボルト×7
ルーフ直下のスラブからスタート。ブッシュ混じりのチムニーを右のスラブに超え、座り込めるくらい大きいポケットに移り一息入れる。上部のスラブからランペをどう処理するか思案。ランペに入ってしまうとそこから先はどうにでもなりそうなのだが(しかしプロテクションは取れない)、そこ迄のスラブはプロテクションは取れない。確実なプロテクションが取れるのは更に上部のブッシュ帯(15m彼方!)。この時点で通算15本のボルトを打っており、ハンマーを振るう右手首に痛みを覚える。もうハンマーに触るのも気が滅入り、ラン・アウトの「甘い誘惑」に駆られる。かといって恐怖感には勝てず、いつも通りの小心な登攀をする。「甘い誘惑」には苦しい時の「呪いの呪文」で対処、力を漲らせ更にボルトを3本打ち込みランペに入り、漸くブッシュ帯に抜ける。
クリーニング終了後、縦走路の露岩で大休止。自己満足に浸りながら下山。帰路は右手首に痛みのため、運転に多少支障をきたした。


白滝山(山口県)東面
“灰色狼”

3ピッチ X+、V+、X+
単独

2003年03月26日

始めに
“スカパフローの雄牛”
で気をよくし、更に右(北)に、新しいルートを開拓する余地が認められ、且つアプローチをそのまま利用出来て比較的楽に取り付けそうだったので、再度天候等の条件の良い日を見計らい登攀を行った。

“スカパフローの雄牛”の取り付きから右上方に20m程藪こぎした所から登攀開始。
1ピッチ 35m X+ フェイス〜フレアしたクラック ボルト×6
取り付きからは凸凹して簡単そうに見えたフェイスだったが、いざ取り付いてみると意外に難しく、且つ岩がやや脆い。恐ろしいのでこまめにボルトを打ち(5連打)、取り敢えずA1で抜ける。上部は見かけ通り簡単な(V+)フレアしたクラック。若干滲み出してはいるが、比較的快適に登れた。クリーニング時に下部をハーハー言いながらフリーで登り返す(X+)。
2ピッチ 20m V+ スラブ ボルト×4(ビレイ点×2)
簡単だが、ガサガサしてあまり快適とは言えないスラブを右上してブッシュ帯に入る。尚、このピッチのルート工作はスリップしても草付にずり落ちるだけで笑い話で済むので、“サイレントパートナー”は使用しなかった。
3ピッチ 35m X+ スラブ〜チムニー〜フェイス ボルト×4
ブッシュ混じりのスラブからチムニーに入る。ナチュラルプロテクションは取れず、且つ一気に抜けることも出来ないので(特に抜け口が見るからに難しそう)、ボルトを3連打してプロテクションを取りつつ抜ける(X+、切り株を使うとW)。これから先は快適なフェイスをダイレクトに越え(W)、主稜線に出る。クリーニング時にはザックが邪魔で実に「熱くなる」チムニーだった。
クリーニング終了後、縦走路の露岩で大休止。何時もように自己満足に浸りながら下山。


クイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“鋸鮫”

5ピッチ V、W-、W、W、W
単独

2003年03月01日

始めに
以前から気になっていたヌクイガ浴山南峰(仮称)の岩壁に漸くこの冬、何時ものスタイル(単独)で登攀を行った。昨シーズンより若干の技術的改良を加え、5ピッチ、X+の、ほぼ当初の見込み通りのルートとなった。

神社の駐車場から凄まじいヤブコギ。事前に偵察はしているとはいえ、登攀用具の詰まったザックでは苦しい。まだ「冬」だというのに(もう春?)大汗をかいて取り付きに着く。ところが、前々日に降った雨の滲み出しによるのだろう、岩はしっかり濡れている!昨日は晴れていたので乾いているだろうと楽観的予想をしていたのだが…仕方が無いので、「まあ行ける所まで行こう」と準備を始める。
1ピッチ 30m V スラブ ボルト×2
スラブをほぼ直上。ブッシュからの滲みだしに神経を使い、乾いた所を選んで登る。濡れていなければさぞ快適なクライミングだろうに…。40mのロウプ一杯迄進みたいところだが、その辺りには適当なテラスが無く、30m程進んだ所のアンカーとなる木があるブッシュ テラスでピッチをきる。
2ピッチ 40m W- スラブ〜フェイス〜スラブ ボルト×4(ビレイ点×2)
やはり濡れたスラブからフェイスを乗り越し、比較的乾いたスラブに抜ける。40m一杯迄進み、テラスでピッチをきる。アンカーとしてボルトを2本打つ。
3ピッチ 40m W スラブ〜凹角〜スラブ ボルト×4
やはり濡れたスラブからブッシュ バンドに出、ズクズクの凹角を木登りすると快適なスラブ。40m一杯迄進み、ブッシュ帯でピッチをきり、大休止。
4ピッチ 40m W スラブ ボルト×4
スラブから目の前のフェイスを左に回りこみ、また快適なスラブ。此処を抜けるとブッシュが酷くなり、岩を選んで登る。40m一杯迄進み、ブッシュ帯でピッチをきる。まだ上部には岩が続いているがこの時点で15:20。更に登攀を続行するか、今日は此処までにしてもう降りるか悩む。ロウプを踏む、ロウプを付け忘れる、セルフ ビレイを取り忘れるなどケアレス ミスを頻発し、疲労も溜まっているのは自明、いつもの小心且つ「冷静」な判断をすれば、即下降である。一方で悪魔も耳元で囁く。もし仮に1日での5ピッチ(以上)のルート工作をやり遂げたとしたら自己最高記録になる(過去最高は4ピッチ)。しかしピーク迄抜けたとしても、登山道と言える程の物は無いのは偵察時に分かっているので、取り付き迄はやはり懸垂下降になる。其処からはまたヤブコギである。それも下手をするとヘッド ランプを点けて、地形が読めない状態である。明るい内に駐車場まで辿り付けるか?勿論後者の選択のほうが「魅力的」ではある。結局誘惑に負けてしまい更に登攀を続行することにする(ヒトはこのようにしてツマラナイ「事故」を起こすのだろう)。
5ピッチ 20m W フェイス〜フェイス〜スラブ ボルト×3
ブッシュ帯を左に回りこみ、岩稜に取り付く。ブッシュを使うと余りにも簡単に登れてしまうので、敢えて使わずボルダリング的な登りを(W)を3回こなし、ブッシュ帯に抜ける。
この時点で16:30。此処から上部は、見える範囲ではブッシュばかりでもう岩場は無いようなので、完登した事とし、急いで下山にかかる。ブッシュ帯のクライミング ダウンを交えた、数回の懸垂下降により取り付きに着く。ホッとする間もなく、更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。

考察
結果的には、1日での5ピッチのルート工作をやり遂げ、且つ一つの岩場を完登したという自己満足に浸る事が出来たが、やはり4ピッチを登った時点で降りるべきであった。長生きする為にも。大いに反省すべき点である。


ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“3匹の魚”

3ピッチ V、W-、W、W、W
単独

2004年03月25日

始めに
“鋸鮫”で気をよくし、更に左(北)に、新しいルートを開拓する余地が認められ、且つアプローチをそのまま利用出来て比較的楽に取り付けそうだったので、再度天候等の条件の良い日を見計らい登攀を行った。

取付迄は“鋸鮫”と同様。今回もまた岩は、前日に降った雨による滲み出しの為だろう、しっかり濡れている。
1ピッチ 45m スラブ W+ ボルト×6 
下部は弱点を狙って登ると、滲み出しで濡れているとはいえ、余りにも簡単すぎるので、敢えて直上。乾いていればフリクションはよく効きそうだが、今回は流石にスリップが怖い。おまけに浮石も多く気を使う。小心な真は小刻みにボルトを打ち込む。上部は比較的乾いた比較的快適なスラブ。40mロウプでは安定したブッシュバンド迄届かず、一旦不安定なブッシュ下端でピッチを切る。クリーニング後、5m程急傾斜のヤブコギして2ピッチ目の取付きとした。
2ピッチ 50m スラブ W ボルト×4
下部は比較的乾いた比較的快適なスラブを直上。上部は滲み出しで全面濡れており右にも左にも逃げられない。ロウプの流れを考え、ボルトをしっかり打ち込み、敢えて直上。緊張を強いられる。このピッチもまた40mロウプでは安定したブッシュ バンド迄届かず、一旦不安定なブッシュ下端でピッチを切る。クリーニング後、10m程急傾斜のヤブコギして3ピッチ目の取付きとした。
3ピッチ 30m スラブ〜バンド V ボルト×4(ビレイ点×2)
安定したバンドで大休止後、3ピッチ目に取り掛かる。生憎アンカーとなる大きな木が無いので、まずはビレイ点としてボルトを2本きっちり打ち込み登攀再開。階段状のスラブを歩くように昇り、フェイスに突き当たる。まともに登るとなると手強そうである。若干脆いフレイクを使い、更にボルトを2本程連打するとフリーで行けそうな気もするが、岩が浮いている!何回か行ったり来たりしし、どうしようか、とか迷っている内に、天気予報通り小雨がパラつき始めたので、これを「正当な」理由として左の簡単なバンドに逃げ、ブッシュ帯でピッチを切る。
ブッシュ帯のクライミングダウンを交えた、数回の懸垂下降により取り付きに着く。ホッとする間もなく、雨が本降りにならない内に、急いで更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。


ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“シュネーマン”

4ピッチ X+、W-、V、V+
単独“”



2005年01月27日

神社の駐車場に車を置き入山。昨シーズンと同じくひたすらヤブコギ。昨夏の台風の為だろうが倒木が多く更に歩きにくくなっている。登攀用具の詰まったザックでは苦しい。やっとの思いで取り付きに着き、登攀開始。
1ピッチ 20m X+ ボルト×5 (スラブ〜フェイス〜スラブ)
岩場最末端から凸凹したスラブを登り、脆いフェイスを取り敢えずA1で乗り越し、外傾したレッジに出る。此処から左に上のバンドに抜けると一息つく。更に凹角からスラブを左上しブッシュバンドの大木でピッチをきる。クリーニング時にはA1の箇所をフリーでレイバック気味に這い上がる(X+)。
2ピッチ 40m W- スラブ ボルト×7(ビレイ点×2)
実に快適且つ爽快なスラブ。岩も硬くプロテクションが充分信頼できる。40mロウプを一杯にのばした所に丁度テラスがあり、アンカーとしてボルトを2本打ち込みピッチをきる。
3ピッチ 25m V スラブ ボルト×4
若干脆いスラブを直上、ロウプを半分ほどのばした所で松の大木が有り、更にスラブが続いている。このまま登り続けるかどうか暫く悩んだ末、結局立派なアンカーとなる大木で一旦ピッチをきる。
4ピッチ 40m V+ スラブ ボルト×4(ビレイ点×1)
3ピッチに引き続き若干脆いスラブを直上する。直ぐにブッシュが酷くなり、岩を選んで登る。スラブの段違いを越しブッシュ帯に入るとそこはウサギのウンコ場!まあイタチのウンコ場で無かっただけまだマシではある。40mロウプ一杯だが、生憎大木迄は届かなかったので、泣く泣く最後の1本となったボルト(20本目!)と潅木とでアンカーとする。
直ぐ目の前に10m程の垂壁(と言うより巨大な段違い)がある。フリークライマーなら此処は「腕の見せ所」なのだろうが生憎誰も見ていないし、そもそも「見せるだけの腕」もない。凡才クライマーの真には人工でないと登れそうにない。ボルトも打ち尽くしたし(尤も残っていたとしても更に連打するのは面倒臭い)、今日は此処迄とする。
ブッシュ帯のクライミングダウンを交えた、3回の懸垂下降により取り付きに着く。更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。




ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“赤い悪魔”

4ピッチ W+、W、V+、W
単独“”



2005年03月20日

何時ものように神社の駐車場からヤブコギの後、登攀開始。
1ピッチ 35m W+ スラブ〜フェイス〜スラブ ボルト×6(ビレイ点×2)
ブッシュ交じりのスラブを右上しフェイスに取り付く。一見した所、節理によるホールド、スタンス共に豊富で快適に登れそうではあるが、実は脆い。リスにハーケンは打てないし、ボルトも効かない。何度も右往左往、行きつ戻りつした挙句、小心な真は左へ左へと逃げてしまった。上部のスラブを右上し、段違の真下のテラスでピッチをきる。クリーニング時には下部を一応直上はしたが、自分で言うのもなんではあるが、二度と登りたくないライン。
2ピッチ 20m W スラブ〜段違〜スラブ キャメロット#1 ボルト×4
スラブを少し登り、目の前の段違を乗り越そうとするが、全体的には硬いスラブなのに、何故かこの肝心な部分だけ脆くザラザラ。おまけに頭大の浮石を落としそうになり、すっかり弱気になった(尤も何時も弱気ではあるが)ので、「まことくんは〜よ〜わ〜むし〜♪」と歌いながら、取り敢えず右の松をホールドにして乗り越す。上部のまた快適なスラブを直上し、少々短い(20m)が“シュネーマン”の2ピッチ目の終了点でピッチをきる。クリーニング時には段違を松の木を使わずに直上。案外どうってことは無かった。
3ピッチ 25m V+ スラブ ボルト×4
直上すると“シュネーマン”の3ピッチ目になってしまうので右上気味に登り始めるが10m程進むと岩場が終わってしまい、唯のブッシュになってしまったので、途中から止む無く左上、上のブッシュ帯でピッチをきる。結局“シュネーマン”の3ピッチ目を右から巻いただけとなった。
4ピッチ 40m W スラブ ボルト×4
若干脆いスラブを右上し、ブッシュ交じりの濡れたスラブを直上。更に濡れたスラブを直上し、ブッシュからスラブの段違いを越しロウプ一杯(40m)にのばしたブッシュ帯でピッチをきる。
例の最上部壁に出たが、今日は既にボルトを18本打ち、7本残ってはいるがもうボルト打ちは面倒臭い。今日も此処迄とする。
ブッシュ帯のクライミングダウンを交えた、2回の懸垂下降により取り付きに着く。更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。




ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“黄金の蹄鉄”

5ピッチ W、X、V+、X、X+
単独


(後日の撮影)

2005年03月30日

神社の駐車場から何時ものようにヤブコギして取り付き、「さあ、登攀開始。」という時になってデジカメを忘れてきたことに気付き一人で腹を立てる。
1ピッチ 20m W フェイス〜テラス〜フェイス ボルト×3
ホールドの比較的しっかりとしたフェイスを直上し、一旦テラスに出た後またフェイスを直上、何時ものブッシュバンドでピッチをきる。
2ピッチ 30m X スラブ ボルト×3(ビレイ点×2)
出だしの絶ったスラブが核心部(ボルト×1)。此処を抜けると極端に傾斜が落ち、「ペタペタ歩き」となる。40mロウプを一杯にのばしたい所だが、スラブの中途半端な場所でピッチをきる事になりそうなので、若干外傾しているテラスで、アンカーとしてボルトを2本打ち込み、ピッチをきる。上部20m程はハーケン、カムが使えるリス、クラック、ブッシュ共に無いが、ボルト打ちも面倒臭いので敢えて中間支点は作っていない。
3ピッチ 30m V+ スラブ ボルト×2(ビレイ点×2)
スラブを直上する。中間支点は6〜7mおき位にあるブッシュから取る。途中フットホールドが欠け数十cm程滑り落ち、泡を食う。手強そうなスラブの段違の直下で、アンカーとしてボルトを2本打ち込み、ピッチをきる。
※後日にボルト3本追加。
4ピッチ 40m X 段違〜スラブ〜フェイス〜ブッシュ ボルト×5
スラブの段違を「ハーハー」言いながら乗り越し(ボルト×1)、簡単な段違を更に越す(ボルト×1)と、ホールドの乏しいスラブ。体をあっちに捻り、こっちに捻りしながら登りきる(ボルト×2)。更に簡単なスラブ、フェイスを登り、40mロウプを一杯にのばしたブッシュ帯でピッチをきり、大休止。昼食を摂る。
5ピッチ 35m X+ スラブ〜ブッシュ〜フェイス ボルト×3
傾斜の無いスラブをペタペタ歩き、ブッシュを抜けると、例の最上部壁。今回は、未だ13本しかボルトを打っていず、腕力が有り余っているので、“鋸鮫”5ピッチ目の右、比較的凸凹のある箇所をほぼダイレクトに直上する事にする。取り敢えずはA1でボルト打ちを始めるが、岩が若干脆い為、2本目の効きが甘く、このボルトに全体重をかけ気にはとてもなれない。このボルトと下のボルトとに体重を分散し、少し上に3本目を打ち足して抜け、クリーニング時にフリーで登り返す。実質的な登攀はこのフェイスの7m程。此れで今日の登攀は完全終了。
直ぐ下のブッシュ帯迄下りてきた頃から小雨が降り始める。天気予報では今日は晴れだった筈なのだが…。何時もならブッシュ帯のクライミングダウンを頻繁に交えての下降となるのだが、雨で滑り易く危険な為、懸垂下降の繰り返しで取り付きに着く。本降りにならなかっただけ未だマシか。更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。




ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“タツノオトシゴ”

3ピッチ W+、W+、V
単独


(後日の撮影)

2005年04月14日

神社の駐車場から何時ものようにヤブコギの後、登攀開始。尚、1ピッチのクリーニング前に写真撮影をしようとすると、デジカメが今度はバッテリー切れ!今日もまた一人で腹を立てる。
1ピッチ 20m W+ フェイス ボルト×2
この辺りもやはり全体的には脆く、快適とは言い難い。ほぼフェイスを直上。下部はフレイクが脆く恐ろしいので、取り敢えずは右から巻く様にして登る(ボルト×1)。上部は濡れている上に抜け口の岩がやはり脆いので、慎重にA0で、何時ものブッシュバンドに抜ける(ボルト×1)。クリーニング時に2箇所共フリーで登るが、登れると分かってもリードするのは気が進まない。
2ピッチ 35m W+ (スラブ〜ブッシュ〜段違〜スラブ) ボルト×5(ビレイ点×2) 
ブッシュバンドからスラブを右上しブッシュを数m掻き分け脆いスラブの段違を乗り越す(W+)。上部は極端に傾斜が落ちペタペタ歩き。左のフェイス末端でピッチをきる。
3ピッチ 15m V フェイス〜スラブ ボルト×4(ビレイ点×2) 
簡単だが脆いフェイスを10m程直上し、岩の露出度が大きい左にルートを採り、カンテを回り込むと何処かで見た風景。そうそう此処は“鋸鮫”3ピッチ目の中間部!ルートが交差するのが嫌なので此処で終了とする。
この時点で未だ13:10。下山するには未だ早いので、更に2ピッチ、1ピッチのルート工作をして下山。




ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“4枚のエイス”

4ピッチ W、V、W-、X
単独



2006年03月09日

ヌクイガ浴山南峰には今シーズン最初の登攀である。今回は最も右寄りにルートを作るべく入山。何時ものように神社の駐車場からヤブコギではあるが、構えていた程には荒れてはおらず、比較的順調に岩場に取り付き、登攀開始。
1ピッチ 40m W スラブ〜バンド〜スラブ〜ランペ〜スラブ〜ブッシュ ボルト×4
スラブから一旦バンドに出、またスラブ。少し登ると(真にとっては)ホールドが無くなり直上出来なくなる。癪に触るが一旦右のランペに「逃げ」、また左のスラブに移りブッシュ帯に抜ける。
2ピッチ 35m(岩20m、ブッシュ15m) V クラック〜テラス〜カンテ〜ブッシュ “キャメロット”#0.5、0.75、2.0
右の簡単なクラックを乗り越しテラスに出る。この上のフェイスはフリーで行けそうな気もするが、ルート工作はA1となりそうで、この先数ピッチはあるであろうことを考えるとボルト連打は面倒臭く、右のクラックが幾つか走るカンテに「逃げ」、ブッシュ帯に入る。
3ピッチ 30m W- 段違〜スラブ ボルト×3
段違を乗り越すと爽快なスラブ!「まだこんな素敵なスラブが残っていたのか!」と「宝物を発見したような幸福感」を覚える。快適に直上するが最上部に若干の滲み出しがあり気を使う。ブッシュ帯で大休止。昼食を摂る。
4ピッチ 40m X スラブ〜ブッシュ ボルト×5、ハーケン×1(回収済)
傾斜のないスラブを10m程登ると急に絶ってくる。下から見上げた時には比較的簡単に登れそうに見えたが、ホールドが細かくルート工作はA1となってしまう。腕もいい加減疲れているし「此処迄登ってからA1は無いだろう」と思うが仕方が無い。「御利益」のある「のろいの呪文」を唱えながら踏ん張る。特に上部は滲み出しが酷く例によってヤッケとズボンとを濡らしながらのボルト打ちの後、漸くブッシュ帯に抜けるとウサギのウンコ場に出る。何か見覚えがあると思ったら昨シーズンルート工作した“赤い悪魔”の終了点、例の最上部壁直下。クリーニング時にフリーで登り返すが、ハンマーを終了点に忘れて来てしまい「高価」な22Tiのハーケンを回収出来ず、貧乏性の真はもう一回懸垂下降して回収する。時間と労力を無駄にしてしまった。いい時間(16:00)になってしまったし、疲れてもいるし、今日も此処迄とする。
4回の懸垂下降によりブッシュバンドに着く。更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。




ヌクイガ浴山(広島県)南峰(仮称)
“黒い悪魔”

5ピッチ V+、W、X+、W-、X+
単独



2006年03月25日

今回は“4枚のエイス”の左にルートを作るべく入山。何時ものように神社の駐車場からヤブコギの後、このヌクイガ浴山南峰最末端のスラブから登攀開始。
1ピッチ 40m V+ スラブ ボルト×3
濡れて苔生し快適でないスラブを直上する。おまけに中間部はブッシュが煩わしい。これもマルチピッチ(と言っても5ピッチ)の「宿命」と思い、我慢のクライミング。上部は比較的快適。丁度40mで真の作った「登山道」に出、ピッチをきる。
2ピッチ 30m W ランペ〜スラブ ボルト×3
ランペを右上した後スラブを直上、ブッシュ帯に抜ける。
3ピッチ 35m(岩20m、ブッシュ15m) X+ クラック〜テラス〜フェイス〜カンテ〜ブッシュ ボルト×4
下部のフェイスを直上しようとしたが真のフリーの実力では叶わず、直ぐ右の人頭大の浮石が2個もあるクラックに「逃げ」、テラスに出る。この上のフェイスは“4枚のエイス”では右のクラックが幾つか走るカンテに「逃げ」たが今回は直上する。ルート工作時にはA0、クリーニング時にヒーヒー言いながら何とかフリーで抜け、ブッシュ帯に入る。
※クラック抜け口の2個の浮石はクリーニング時に剥がした(落とした)。
4ピッチ 30m W- 段違〜スラブ ボルト×3“キャメロット”#4.0
若干脆い段違を慎重に乗り越すと例の爽快なスラブ。今回は滲み出しが全く無く、快適に直上、ブッシュ帯に抜ける。
5ピッチ 35m X+ スラブ〜ランペ〜スラブ〜ブッシュ ボルト×6、ハーケン×1(回収済)
ブッシュ交じりの快適でないスラブから乾いたスラブに出る。上部は滲み出しがあるものの比較的凸凹があり、ルート工作時にはA1になるだろうが、最終的にはフリーで行けそうだ。もうこのスラブを超えると岩場は無さそうなので直上することにする。ランペ迄は簡単に進むが此処から上部が滲み出しで悪い。2本目のボルトは「遥か」下、此処でボルトを1本打ちたいがスリップが恐ろしいので数mクライムダウンしボルトを1本追加、更にランペのリスに気休めにハーケンを1本打つ。ズボンをベチャベチャにしながらA1でルート工作をした後ブッシュに抜けると、例のウサギのウンコ場に出る。クリーニング時にヒーヒー言いながらフリーで登り返すが、この上部のルート工作で消耗してしまった。このピッチで疲れ果ててしまい、今日も此処迄とする。
4回の懸垂下降によりブッシュ バンドに着く。更に此処からヤブコギをして駐車場に戻る。


飛行機山(広島県)
“降下猟兵”

4ピッチ V-、W+、X、X+
単独



2003年12月10日

始めに
以前から気になっていた飛行機山東面の岩場に漸くこの冬、何時ものスタイル(単独)で登攀を行った。昨シーズンより若干の技術的改良を加え、4ピッチのほぼ当初の見込み通りのルートとなった。主稜線付近から数回の懸垂下降をして取り付くルートである。一旦降りてしまえばエスケイプは極めて困難、登り切ってしまわなければ一般登山道には戻れない(尤も壮絶なヤブコギをすれば戻れなくも無いだろうが)、という「適度なプレッシャー」の下でのルート工作であった。

墓地の近くの駐車場から、一般登山道を経て飛行機山。ここからは暫くヤブコギをし、偵察時に予め整地しておいたテラスの降下点に到る。此処で登攀準備。此処から先に足を踏み入れるのは、おそらく真が最初(そして最後?)だろう。「今日中に必ず登り返す!」という「揺るぎ無い決意」の下、降下を開始する。取り敢えず灌木からシングル・ロウプで1回懸垂下降し、下のテラスに降り立つ。此処から更に灌木から見下ろして右手(南)のより大きいスラブへダブルロウプで降下を始める。すると下部はなんとオーヴァーハングしているではないか!このまま下降をするか、一旦登り返して、見下ろして左手(北)のより小さいスラブに改めて下降し直すか暫く考えるが、オーヴァーハングをまともに登らなくても、いざという時にはその右の草付チムニーなら比較的簡単に登れそう(希望的観測)なので、そのまま降下を続ける。基部に降り立ってみると、やはりオーヴァーハングしたぺらっとした壁をまともに登るとなると10mはA2である。そんなことをしていると明るい内に登りきるのは極めて困難。一流クライマーにとっては『困難』は『克服すべき対象』なのだろうが、凡才クライマーにとっては『困難』は『避けるべき対象』である。躊躇うことなく草付チムニーに向かう。
1ピッチ 15m V- チムニー ボルト×1
シダ類の生い茂った快適で無いチムニー。特に出だしはチムニーの幅が広く、両側の壁を使って登ることが出来ず、半分ヤブコギ。半分程(約7m)登ると漸くチムニーの幅が狭まり登攀らしくなる。右の側壁が脆く、朝一番で緊張感、恐怖感も強いため、念のためボルトを1本打っておく。テラスに抜けピッチを切る。
2ピッチ 35m W+ 草付クラック〜バンド〜スラブ ボルト×4
テラスから左の草付クラックに入る。土で足元が悪く、ぐらつくフレイクが気持ち悪い。こまめにボルトを打って(3本)、そろりそろりと登る。バンドを経て上部は快適なスラブ。草を剥がすとポケットが現れラッキー!最初にシングルロウプで懸垂下降して降り立ったテラスに出る。尚、クリーニング時に、フレイクをハンマーで叩き落そうとしたら、いい具合にホールドに欠けてしまった。これってやっぱりチッピング?
3ピッチ 10m X クラック〜バンド〜クラック ボルト×2
正面の垂壁をまともに登ろうとするとA1になってしまいそうなので(別にフリーに拘ってはいないのだが)、テラスを少し右に回りこみ、短いクラックに取り付く。未登の岩壁なら良くある事だが、クラック内はザラつき、若干のブッシュ。カム(“キャメロット#0.75”)の効きが不安なのでボルトを打つ。『危険を克服する』などという殊勝な考えなど全く無い、小心者の真の、『危険そのものを排除する』という、いつも通りの防衛的な「戦術」である。レイバックで乗り越し(W+)バンドに這い上がると、また短いクラック。やはり下のクラック同様、このクラック内もザラつき、若干のブッシュ。カム(“キャメロット#2”)の効きも不安なのでボルトを打つ。少し登りカム(“キャメロット#3”)を噛ませレイバックで乗り越す(X)と、朝1番で懸垂下降したテラスに出る。ロウプはまだ充分にあるが、腹も減ったし、取り敢えず「歩いて帰れる」場所まで登り返したという安堵感の為、緊張感が一気に抜けたこともあってここでピッチをきり大休止。
4ピッチ 25m X+ フェイス〜バンド〜リッジ〜スラブ ボルト×3
正面の若干かぶった壁をまともに登ろうとするとA2になるので(別にフリーに拘ってはいないのだが)、カンテを少し右に回り込んだフェイスから登り始める。出だしが核心部(X+)。何回かトライした後漸くフリーで立ち込み、バンドに這い上がり、リッジに出る。実質的な登攀は此処で終了だが、アンカーが無い為(ボルトを打つのが面倒くさい)、少しヤブコギをして小さいスラブを乗り越した松の大木迄ロウプを延ばしルートの完成とする。
今日は実に楽しい一日だった。


飛行機山(広島県)
“緑の悪魔”

3ピッチ X+、W+、AO
単独

2003年12月10日

始めに
“降下猟兵”
で気をよくし、更に左(西)に、新しいルートを開拓する余地が認められ、且つアプローチをそのまま利用出来て比較的楽に取り付けそうだったので、再度天候等の条件の良い日を見計らい登攀を行った。

前回同様、テラスの降下点で登攀準備。やはり前回同様、2回の懸垂下降の後、基部に降り立つ。いざという時には右の草付チムニーから“降下猟兵”の1〜3ピッチを登攀し比較的簡単にテラスの降下点迄戻れることは分かっているので、今回は前回の様な気負いは無い。オーヴァーハングしたぺらっとした壁の左からなら、岩を大きく迂回するようで多少気が引けはするが、傾斜が落ち且つ凸凹が有り、いけそうである。ヤブが酷いので整地をした後、登攀開始。
1ピッチ 35m X+ スラブ ボルト×5 
出だしからX+のムーヴが3ポイント続く。ハーハー言いながらトラヴァース気味に少しずつ前進。10m程で安定したバンドに出、一息着く。此処から上部は傾斜が落ち、懸垂下降時にはペタペタ登れそうに思えたので、一気にいく。が、いざ登り始めるとスラブ表面は、当初は気にならなかったのだが、ザラつき身体中がカーとしてくる。今更下のバンドには下りられないし、勿論止まってのボルト打ちなど出来ない。ズリ落ちた場合には傾斜の緩い上部で、“SILENT PARTNER”にショックがかかる前に、メインロウプを掴んでしまわないと、真下はハングしているので大墜落になってしまう。計らずも恐ろしいランナウトをしてしまった(小心者の真には全く似つかわしくない)。先入観があるとロクナことは無い。結果的にはブッシュ帯迄、ずり落ちる事無く、抜けはしたが、この10mでまた「白髪が増えた」(髪の毛が減った)。
2ピッチ 20mW+ ハングしたクラック〜草付ランペ〜スラブ ボルト×3
前回とは逆に、今回はテラスを少し左下に回りこみ、短いが若干ハングしたクラックに取り付く。未登の岩壁なら良くある事だが、クラック内は滑り、岩も脆い。おそらく上部の草付ランペからの滲み出しの為だろう。取り敢えずカム(“キャメロット#4.0、3.0”)を2個噛ませるが当てには成りそうでは無いので左の岩にボルト2本打ち込む(上のボルトは岩が脆く効いていない)。一流クライマーなら『危険を克服する』のだろうが凡才クライマーの真は、『危険そのものを排除する』といういつも通りの防衛的な「戦術」である。体中を泥だらけにし、ハーハー言いながら、この汚く且つ快適で無いクラックを抜けると草付ランペ。岩登りというよりは薮コギに近く、これまた快適とは言い難い。最後に簡単なスラブを超え、マツの大木でピッチをきる。尚クリーニング時にはザックまで泥だらけになり、更に快適では無くなった。
3ピッチ 10m A0 スラブ ボルト×3
マツの大木から左に少し薮コギし、スラブに取り付く。多少凸凹があり、フリーでいけそうに見えたのだが、意外に難しく、取り敢えずはA0で抜ける。クリーニング時にフリー化しようとして何度もグチャグチャしてはみたものの、疲労の為か、ただ単にフリークライミングの「実力」が無い為か、あるいはそれらの相乗効果か、1ポイントのムーヴがどうしてもこなせない。いい加減面倒くさくなってきたのでフリー化は諦め、終了とする。
今日はやや欲求不満な一日だった。


傘山(広島県)
“ブラック ピット”

3ピッチ W V+ W+
単独



2007年03月08日

始めに
何年も前から気にしていた傘山西壁に、漸くこの冬、何時ものスタイル(単独)で、合計3本のルート開拓を行った。遠望して予想していた通り、全体的には傾斜の緩いスラブでありやや緊張感に欠け、スケイルは若干小さいものの、まるで白滝山南西壁の再来であった。てっきり既に誰か登っているだろうと思っていたが残置支点は全く無く、ひょっとすると初登かも知れない。過去の登攀記録を御存知の方は御連絡頂きたい。

登山口の駐車場に着いてみると「想定外」にもうっすらと積雪!こんな筈ではなかったのだが…。岩場はどうなっていることやら…。取り敢えず縦走路をコルを経て下降点迄登る。此処でヘルメットを装着し、ひたすらヤブコギをして岩場末端迄降りてみる。どうやら積雪も登攀にはあまり支障は無さそうなので予定通り登攀開始。
1ピッチ 20m W スラブ〜クラック〜スラブ “キャメロット”3.0
傾斜の無いスラブをペタペタ「歩き」、クラックを「どっこいしょ」と乗り越し(W)(左から回り込むとV)、またスラブを少し登りブッシュ帯でピッチをきる。
2ピッチ 35m V+ スラブ ボルト×4(ビレイ点×2)
若干傾斜のあるスラブを登ると上部は爽快なスラブだが、この頃からまた「想定外」の吹雪!吹き曝しで寒くはあるが、いざという時にはブッシュ帯に直ぐに逃げられるので登攀続行。ロウプ一杯迄延ばすとスラブの真ん中でピッチをきる事になりそうなので、足場の良いレッジでピッチをきる。
3ピッチ 30m W+ スラブ ボルト×2
2ピッチに引き続き爽快なスラブを登る。最後はスラブの段違をダイレクトに乗り越し、ブッシュ帯で終了。
3P目をクリーニング終了した時点で12:50。吹雪も止んだことだし、且つまだ充分時間的余裕があるので、更に2ピッチ(V、V)と1ピッチ(W)のルート工作の「演習」をして下山にかかる(17:20)。縦走路の下降点迄ヤブコギし漸くヘルメットを脱ぐ。此処から登山道をコルを経て駐車場に戻る。




傘山(広島県)
“コンボイ”

4ピッチ W-、W、V、V
単独



2007年03月29日

BGMに「コンボイ」を聞きながら傘山に向かう。前回の“ブラック ピット”同様、登山口の駐車場から縦走路をコルを経下降点迄登る。此処でヘルメットを装着し、岩場混じりのヤブコギをして下部下降点に辿り着く。此処から懸垂下降で岩場末端迄下り登攀開始。
1ピッチ 25m W- 階段状スラブ〜テラス ボルト×1
階段状でホウルドには事欠かないが脆く浮石が多い。10m程登った所で部分的に凸凹が無くなるが、ボルトを1本打ち直上(W-)(左に逃げるとV)。この頃「想定外」にも雨!天気予報では晴れの筈だったのだが…。テラスに出た時点でロウプ(40m)は半分以上出ており、更に上部のブッシュ帯迄ロウプが届くかどうかも不安なので一旦ピッチをきる。
2ピッチ 15m W スラブ ボルト×1
暫く(10分程度)天気の様子見るが、どうやら雨も上がったので登攀を続行する。出だしが若干絶っているが数mも登ると傾斜が落ちるが滲み出しが酷くいやらしい。ブッシュ帯でピッチをきる(後に“エニグマ”ルート工作時に打ったボルトの左からブッシュ帯に入る)。
3ピッチ 15m V クラック〜スラブ “キャメロット”4.0 ボルト×1
節理に発達した簡単なクラックを素直に登り、上部の傾斜のないスラブをラインが長くなるように左上し、ブッシュ帯でピッチをきる。
4ピッチ 35m V 階段状スラブ〜段違〜スラブ ボルト×3
下部は乾いて且つ岩もしっかりしており快適に登るが、上部はやはり滲み出しが酷くいやらしい。ブッシュ帯でピッチをきる。
4P目をクリーニング終了した時点で12:50。まだ充分時間的余裕があるので、更にこのルートの右にもう1本ルートを作るべく再び下降する。




傘山(広島県)
“エニグマ”

3ピッチ X-、W、V-
単独



2007年03月29日

1ピッチ 30m X- 階段状スラブ〜凹角〜スラブ ボルト×2
階段状のスラブを暫く登り、絶ったホウルドの乏しい凹角を直登(X-)。上部の滲み出しが酷くいやらしいスラブは“コンボイ”と交差しないようにボルトの右を登りブッシュ帯でピッチをきる。
2ピッチ 10m W カンテ〜スラブ ボルト×1
“コンボイ”と交差しないように、出だしは左の転石は使わずカンテを直登し、上部の傾斜のないスラブを今度は直上しブッシュ帯でピッチをきる。
3ピッチ 35m V- スラブ ボルト×2
スラブ末端を「どっこいしょ」と這い上がり、傾斜のないスラブをペタペタ「歩いて」ブッシュ帯で終了。
3ピッチ目をクリーニングし終えた時点で流石にいい時間(16:45)になったので本日のクライミングは終了とする。縦走路の下降点迄、岩場混じりのヤブコギし漸くヘルメットを脱ぐ。此処から登山道をコルを経て駐車場に戻る。