小児の歯科治療は虫歯の予防、虫歯の治療、および咬合誘導(こうごうゆうどう)に大別できます。
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虫歯の予防は歯質強化を目的としたフッ素塗布と、虫歯になりやすい溝をプラスチックで前もって埋めておく予防充填が主なものです。
虫歯の治療は虫歯の状態や大きさによって、銀やプラスチックでつめたり、乳歯用の金属冠でかぶせるのが主なものです。しかし、乳歯の場合は永久歯の場合とは違って、虫歯の進行を抑制する薬を塗布するだけで良い場合もあります。
咬合誘導(こうごうゆうどう)は最近小児歯科治療のなかで盛んに使われるようになった言葉ですので、少し詳しく説明させていただきます。
乳歯のかみ合わせから永久歯のかみ合わせに移り変わる間に、歯、顎のほね、顔面は変化しながら成長していきます。
この過程を観察していき、もしも成長発育を障害し不正なかみ合わせになることが予測される場合には、その原因を除去したり、適切な処置を行うことによって、正常な永久歯のかみ合わせに導くというものです。また将来どうしても永久歯のかみ合わせに不正がでるようなケースでも、その程度を少しでも軽くしようとする意味のものです。
咬合誘導の1症例です
写真1は最初に来院された時の状態で、上の前歯2本と下の前歯4本が永久歯でその他は全て乳歯です。
左上の前歯(むかって右)が前後逆のかみ合わせになっています。
乳歯の抜ける時期のずれなどが原因と思われますが、このままにしておくと上顎(うわあご)がうまく成長できず、場合によっては顔がゆがむことも考えられます。
写真2は左上の前歯の前後関係を正常に戻すために、簡単な矯正治療をしたところです。早期だったので3ヶ月で終わることができました。
写真3は歯に接着していた器具をはずした状態です。歯に接着する器具(ブラケットといいます)は、写真のような金属製の他に白いプラスチックやセラミック製のものもあります。
写真4は治療直後(写真3)より6年後のものです。永久歯が全て生えそろっています。6年の間は1年ごと定期的に経過を見させていただきました。
細かいところでは若干の歯列の乱れがありますが、最初の時点で何もしないで、6年後に必要になる可能性の高い永久歯列の矯正治療を考えると、咬合誘導の意義がご理解いただけると思います。
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