Episode T

3 退院に向けて

父と母が語る憧太物語

 憧太の容態は落ち着き、退院に向けていろいろと両親が覚えて帰らなくてはいけないことがあった。

  まずは授乳の仕方。憧太は口唇口蓋裂のため普通にミルクを飲めない。プレートを口の中に入れて裂の部分をふさいで上げる必要がある。さらに心肺機能に障害があるため、長時間にわたってミルクを吸い続けることは、体力の消耗となる。その上、勢いよくミルクを飲めたとしても、それはそれで血中酸素濃度が低下する要因となり気をつけなければならない。したがって、哺乳瓶からの授乳に合わせて、鼻から胃袋へ入れられたチューブより、ミルクを流し込む方法を行わなければならなかった。
 その方法を家庭で行うために、チューブを気管ではなく胃袋に入れる練習をさせられた。母親は看護婦。しかし、新生児にチューブなど入れる経験はなく、緊張しながらそれを行う。
 哺乳瓶での授乳は、20mlから30ml飲むのに20分、30分かかることもあり、結局チューブを使っての授乳となることもよくあった。
 さらに退院した後、気をつけなければならなことがある。心不全症状に対する警戒である。ミルクの量は制限され水分調整のために排尿を促す薬を飲ませなくてはならない。

 この子を家庭で看ることができるか・・。このまま病院に居たほうが安心であることは間違いない。しかし、幸せなことに、憧太の退院を家族、親戚、みんなが一日も早くと願っていてくれている。いくつもの障害を抱えたこの子の帰りをみんなで待っていてくれている。親も願う。早く退院を。

退院も間近。外科医と口や指の手術について見通しの持てる話がしたかった。やはり外見のこと、気になる。
  普通、口唇裂の手術は生後三ヵ月ころに行われる。憧太もそうなるのか・・・。そのころに手術できるのか。心配な要素があった。・・・多くのミルクを飲めない、飲ませられない・・・ということである。体重が増えてないだろう・・三ヶ月来ても。
 その上、退院直前には、心臓の状態が十分いいとはいえない状態になっていた。すぐにどうこうということはないらしい。
 当初、 心臓より口の手術が先に行われると思っていたが、センターから退院するころには逆になっていた。
「心臓が落ち着いてから口」・・・落ち着くってどういう状態か。・・・ドクターもはっきり言わないが、どうも手術をして後ということのようだ。 思ったより心臓が良くならないよう。

喜びと不安、さまざまな思いを抱いたまま、10月11日退院する。               つづく

                                            

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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