ダウン症の障害を考える

 障害は多かれ少なかれ、ある疾病と関係があります。ダウン症もまた、特有の病因と病理変化と発現を持つ「疾患」であり、このためいろいろな「障害」が起こってくるのです。
1.病因
 ダウン症の病因は染色体異常です。タイプによっては遺伝が問題になりますが,大方のところその原因はわからず、40歳以上の母親からの出生率が飛びぬけて高いので、退行変性説などありますが、積極的な予防の手立ては今のところほとんどないといえそうです。
2 病理変化
 大脳では、神経細胞の萎縮や、細胞数の減少、構造の乱れがあり、機能分化が遅れますから、皮質性運動発達(歩く、つまむ)や、言語発達がある程度遅れるのはやむをえないことですし、小脳の発育不全や胎生期の細胞の残存もまた発達に不利な条件の一つになります。
 しかし、筋肉や関節構造には重大な病理変化は認められておらず、全体をまとめて考えても、運動、ことば、健康など、個別に対応できる問題ばかりで、生活に致命的だと思われる病理的要因はなさそうに思われます。
3 発現(特有の症状や徴候をさします)
 ダウン症児のもつ外見上の類似性や、精神発達遅滞、低緊張性による運動発達上のいろいろなできごとが、これにあたりますし、ほかの合併症もここに含めて考えるべきでしょう。
 これらに関しては、親や周囲の人たちの働きかけいかんによっては、どのようにも変わる可能性があり、現に一歳半までに歩き、はっきりした言葉をもった子供が続々と出てきています。
 これからの時代はダウン症児の大学受験や結婚や、就職や社会活動のことについて話し合われていく時代です。

障害としてのダウン症
1 機能・形態障害
ダウン症児には先天性心疾患や鎖肛、十二指腸狭窄、閉鎖などの消化器疾患、眼振や斜視、白内障などの眼疾患に加えて、難聴などの合併症が多くそのため、身体発育や精神運動発達の遅れがいっそう強められます。
 しかし、以上に述べた障害は、すべて現在の医療で十分に治療可能ですから、積極的に取り組みさえすれば、健常児とほとんど変わりない、生活の質と発達を保障されるはずです。

参考書籍
 
新版 
ダウン症児の育ち方・育て方
            -
学研-