アルデバラン「……」
ほのか「……(怒)」
ほのかとアルデバランが、先ほどから何も言わずに見つめあっている。
いつもの腕組みポーズで表情一つ変えずにたたずんでいるアルデバランに対し、ほのかの方は眉間に思いっきりしわが寄っていて見るからに不快そうである。
デスマスク「……あの二人、何でさっきから見つめあっているんだ?」
アフロディーテ「何でも、にらめっこ対決をしているらしいよ……んっふ。
お互い目線を合わせ続けて、どちらが先に我慢できなくなるかを競っているみたいだ。……実にくだらない。」
ムウ「しかし、アルデバランに真剣勝負をさせるわけにもいかないでしょう。
もし彼が本気を出したならば、金牛宮が血の海になりかねませんよ。
その後始末を手伝わされるのは嫌でしょう?」
デスマスク「……そ、そうだな。あの無芸大食のでくの坊でも、金牛宮をぶっ潰すぐらいは朝飯前だしな……」
シャカ「芸がないのは貴様も同じだろう。
いい加減、積尸気冥界波以外の技を編み出したらどうだ。」
デスマスク「ハッ! 俺様はなぁ、積尸気冥界波が決まれば一撃で敵を倒せるのだぞ!!
一撃必殺の技があれば余計な他の技はいらぬ、それが俺様の強さだ!」
シャカ「……そんなことだから、黄金聖闘士中最弱の汚名が、いつまでたっても返上できないのだぞ。
この私を見習え!
黄金聖闘士中、もっとも多くの技を持っているこの私を!!」
デスマスク「……(怒)」
デスマスクとシャカの間には、今にも
勝負になったところでデスマスクの負けは目に見えている(爆)のだが、どちらにしろ周りの連中がとばっちりを受けるのは確かだ。
夏穂「……はいはい、馬鹿二人は放っといて、さっさと先に進みましょう。」
一輝「(小声)……あのシャカをバカ呼ばわりするとは……。」
瞬「(小声)知らないってことは恐ろしいことだよね、兄さん……。」
一輝&瞬の心配をよそに、夏穂は話を続ける。
夏穂「……しっかしこの勝負、このまま続けてええんかいな……。
ほのかちゃん、筋金入りの男嫌いで、父親以外の男とは出来るだけ顔を合わせたくない言うてたからなぁ……。」
ムウ「確かに……。あの様子では彼女、下手をすると精神崩壊を起こしかねませんね……。
でも大丈夫でしょう。我々黄金聖闘士も普段は男ばかりのむさ苦しい生活を送っていますから、女性と顔を合わせるのは慣れていません。条件はほぼ同じですよ……。多分。」
晶「……そういう問題じゃないと思うんだけど」
皆の予想通り、ほのかの我慢はもはや限界に達していた。
ほのか「もうダメ! 我慢できない!!(怒)
好きでもないのにあんなむさ苦しい男と見つめ合うなんて、とてもじゃないけど出来ないわ!」
カノン「ということは……『出ると負け聖闘士のかませ犬ならぬかませ牛』アルデバランの勝ちか?」
ムウ「そういう言い方はないでしょう……。
彼とて黄金聖闘士ですから、敵に一矢も報いずに負けることなどあり得ませんよ。
……さてアルデバラン、あなたの勝利を牛丼パーティーで祝いま……、!!」
アルデバランの様子を見に行ったムウは、あまりの衝撃に崩れ落ちた!
星矢「ん? どうしたんだムウ、アルデバランの顔に何かついていたのか?」
ムウ「いや……彼、大きく目を開いて相手を見据えたまま、気絶しているんですよ!
やはり、普段男としか顔を合わせていないから、あんな美しい女性とにらめっこをするのは無理があったみたいですね……」
晶「……バカみたい」
と、言うわけで……
この勝負、引き分け
一方で、シャカとデスマスクの口げんかは未だに続いていたが、とばっちりを受けるのをおそれた他の聖闘士達の調停により、何とか収まったのであった……。