7 |
1 |
金 | 大好きな雨が降る。黄色い雨合羽を着て登校する小学生。雨が降っても当番の水やりを実直に果たしている男の子が、何とも微笑ましい。緊張感が一遍に吹き飛んだ。昭和28年に卒業した母校の全校朝礼でお話をするのだ。小説を書こうと思った動機、二編の作品朗読である。傘もささずに校庭に立つ。雨と涙が入り混じって零れ落ちた。懐かしい。 |
◎ 季節の移ろい
| 七 月 |

| 荒神谷遺跡 |
| 古代ハス |
7 |
2 |
土 | とまどろみの中で遠雷と電車の音を聞いていた。特別お座敷電車で飲んだ生ビールが、体のどこかでまだ燃えている。体が覚えた電車の揺れが、また私を眠らせる。三味線や太鼓の囃子、安来節に手拍子、車窓の夜景に癒され、松江しんじ湖温泉駅から雲州平田駅間を往復。喉元を過ぎる清涼感に酔いしれた。知らないもの同士は結構楽しい。 |
7 |
9 |
土 |
・・・平成十七年度出雲科学アカデミー受講生代表あいさつ 平成十七年七月九日 受講生代表 原 美代子 |
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3 |
日 | 家族が集うことは有り難い。スイカ、メロンを切ってもすぐに無くなる。冷凍室に貯蔵した手作りのギョウザも春巻きも、お皿に盛り付けると空になる。小麦粉を牛乳で解かし長芋をすって、卵、海老、イカ、キャベツ、もやしを混ぜ鉄板に流す。豚肉を張って両面に焦げ目。マヨネーズと花鰹にソースでお好み焼き。美味しいと言って食べてくれる人が居る。 |
7 |
4 |
月 | どんな時も嫌な顔もしないで微笑んでくれるから甘えたくなる人。「悪い印象を与えたかな」。でも、相手の気持ちになってのお話し上手。地域の人に頼られて毎日が多忙。70歳の年齢とは思えないほど頭の回転も素早い。機転もあって頼もしい。歳をとらない秘訣は何に? 教えて欲しい。庭の山モミジが雨風に大きく揺らぐ。「家に閉じ籠らないことね」 |
7 |
5 |
火 | 雨が止んで雲間から陽がさす。幾つもの寄せ植え鉢を置き、ロマンチックに演出した私流の前庭。玄関ポーチに立って見ていた。慈雨に生き生きとした花たち。水不足のために、風呂の残りや炊事の時の洗い物をバケツに溜めて散水していたが、枯れる花もあった。季節は今は梅雨。毎年、猛暑になると花作りはやめようと思う反面、花数は増えている。 |
7 |
6 |
水 | 春に咲いていたのに、また花芽を付けているラベンダー。乾燥させたものを下着の引き出しやタオル入れに潜ませ、クロゼットに吊るす。やわらかい香りが好きだ。私に例えて花占い。……温厚な印象なのに意外と明るく香り豊かな面も、社交家、責任感の強い人、堅実な愛を育てていく方。言い寄る人は多いけど簡単にはなびきません。当っているかも。 |

| 課外授業 |
7 |
7 |
木 | 五色の短冊に願い事を書いた笹竹が洗濯の物干し台に括りつけられている。厚い雲に覆われた七夕の日。雨が降ると天の川が氾濫、橋を架けてくれるお月様も隠れてお出にならない。一年に一度会える日を心待ちにしている織姫と彦星。何だかとても辛い。遠距離恋愛も交通手段が便利で逢いたい時に逢える。伝説の純愛はいつまで続くのでしょうか。 |
7 |
8 |
金 | 松江をこよなく愛したパトリック・ラフカデイオ・ハーン(日本名・小泉八雲)の関連映像が流れ、曾孫である小泉凡先生の解説に耳を傾けていた。ケルト民族の国アイルランドで少年時代を過ごし、乳母から妖精の話を聞いて育った。「耳なし芳一」「雪女」などの怪談はその影響なのかも。生涯に約30冊の単行本を上梓している。紀行文を読んでみたい。 |
7 |
7 |
10 |
日 | 電話の向こうで友だちは黙ってしまった。「毎日でも雨は降ってもいいわ」と言ったことへの抵抗。雑草を抜いてもまた生えてくるし、刈ってもすぐに伸びるので追っかけっこらしい。地球の大地の大部分を占めている草。踏みつけられても挫けないで、地下に根を張り、地上に芽を出す。生命力そのもの。確かに、油断していると庭中に草が生えている。 |
| 社 文 |
OB | 高天原から稲穂を持って降りられ、農耕を進めた三穂津姫命が祀られている美保神社に詣でる。稲穂は御種を受ける安産信仰と、お米などの農作物一切と生けるものの生命力を表している。その昔、祖父は田植えが終わると宍道湖を船に乗り「泥落し」と言って、豊作祈願に関参りをしていた。農穣感謝の意味を持つ諸手船神事は12月3日にある。 |
| 島 根 |
半島 |
巡り | 鉛色の岩肌が重く頭の上に覆い被さる。死んだ子供の霊が集まる仏の世界と、神の住まう海食洞窟が存在する神仏の聖地。不思議な島根町加賀の潜戸をグラスボートで巡った。波で断崖が侵食されて出来た洞門を潜ると、神々を集めた場所とされる錦が浦、領土を仕切るための屏風岩、火を焚いた二つの竈跡。景観に神話が繋げてあり面白い。 |
| NO | 1〜3 |
海底火山によって盛り上がった大根島。溶岩流が作った地底トンネルに入る。昭和10年6月天然記念物に指定。入り口は岩塊が崩壊し狭い。暗闇に奇妙な雫の音。屈めた背や頭、顔を容赦なくその物体が襲う。ぞくっとするような霊気を感じる。竜のような側溝状の岩盤には清水を湛え、竜神が集ったとされる溜まり場へ引き込まれるような怖さに慄く。 |
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14 |
木 | 風が山の向こうへ雨雲を運んで行く。大気汚染も洗い流して、青い空が見え隠れする。澄んだ空気を胸に吸い込み気分爽快。「健康食と生活習慣」の勉強と保健士の指導で昼の料理を作り受講生で試食するのだ。和食それともフランス料理、どちらにしても私のレパートリーが増える。忘れない内に友だち呼んでご馳走しましょう。心と体に美味しい食事。 |
7 |
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金 | 一町地蔵に手を合わせる。大山寺へ通じる旧街道の横手道。草木が生い茂る新緑の森のトンネルを歩く。雨の色をしたヤマアジサイの群落に恋をし、その中に身を埋めた。赤褐色でベージュと白の斑模様の美しい巨木はナツツバキ。咲いた花の形のままで散る一日花の悲哀を醸し出していた。しかし、羊歯に白い蝶が舞い降りるメルヘンの世界にも思えた。 |
7 |
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土 | カラフルに咲く寄せ植え鉢。長雨に水をいっぱいに吸い込んで茎が長く伸びた。その先端へ競うように花を付けている。急に上がった気温に絶えられなくなり、うな垂れている。過保護か。管理不足か。ベコニア、ペチュニアは強い。野山に自生する逞しい花を思い浮かべる。振り向いて欲しいとハーブが匂う。素知らぬ振りして百日草に頬ずりをした。 |
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17 |
日 | 私の家の庭は昆虫の住みか。蝶やトンボ、蜂などが飛んでいる。コガネムシ、アブラムシの害虫もいる。環境がいいらしい。メタリックに羽根を震わせて庭石にシオカラトンボが止まった。飯石郡飯南町で宿泊した夜に飲んだ「八丁蜻蛉」と名前の付いた焼酎の味が、なぜか、ほろ苦く喉元に蘇る。赤名湿原にいる体長2cmの幻のトンボは飛んで来ない。 |
7 |
18 |
月 | 毎日が日曜日の生活をしている。今日は「海の日」で祝日。スケジュールを書き込んだカレンダーは埋まっているが、赤い字の休日、祝日は無感覚。我が家の若い家族はディズニーランド、ソフトボールの試合、万博と連休が多忙らしい。お互い離れていてもいい関係のファミリーである。私のパートナーはパソコンだが、人間的感情の喜怒哀楽は…? |
7 |
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火 | 出雲には豊かな医療神話・伝承がある。赤裸の兎に治療方法を教えた大国主命、出雲国風土記の玉造温泉、湯村温泉は「万病ことごとく除こる」とある。平安時代、中央政府に貢進される薬草は53種。「癒しの国・出雲」と題しての講話を聴いて帰った。外気に火照った体を冷蔵庫で冷やした「出雲十福どくだみ健康茶」が潤す。出雲は薬草の宝庫である。 |
7 |
20 |
水 | 6+1=1 0+0=2 9+6=2 なぜ? 8+8=4 6+6=2 う〜ん。呆けない頭の体操。8+0=3 「解かりましたか」。全員が顔を見合わせ頭を振っている。算数の出来ない子供でも回答すると言われても問題が解けない。数字にある○の数をたしたもの。視点を変えて見る柔軟性を失った、老いる私の頭脳。人生を実直に歩んできた者には難しい。 |
7 |
21 |
木 | 夏の斜陽が白壁土蔵に揺れる。旧い町並みが残る天満宮への道。家族で友だちで、お参りする人の群れ。20、21日は夏祭り。夜店のおもちゃ屋の前で足が止まった。「仮面ライダー買って」「私はリカちゃん人形」。遠くなった思い出に浸るのは辛いはずなのに、過ぎし日を探しに来た。「欲しいものをひとつ買ってやれ」楠の洞からあなたの声を聞いたような。 |
| 天満 宮 |
夏祭り 「一式 飾り」 |
古い陶器や茶器、仏具、金物など、それら一式を自在に使い、技巧を凝らして各町ごとに展示する。奇病が流行った時、表具師が茶器を使って大黒さんを作り悪病退散を願ったのが起源である。「ぶんぶく茶釜」「弁慶と牛若丸」「がんばれ! 藍ちゃん」。万博会場で見た冷凍マンモスも登場している。200年以上の伝統芸術は素晴らしい。 |
7 |
23 |
土 | 気怠い朝である。曇り空が頭の上に重く押しかぶさる。洗濯物を干し終えて飛び石に腰を下ろした。ワンピースの襟元を風が通り抜ける。クチナシの花が匂う。いつ咲いたのだろう気付かなかった。マキの木陰から濃い緑の葉に映える純白の花。朽ちる時に、色あせて強い芳香を放つ。「汚れを知らず、清らかな心、自分を甘やかさない」クチナシが囁く。 |
7 |
24 |
日 | 「本との出合い、人との出会い」と題した講演を聴く。風景にも出会いがある。大原富枝という作家が書いた「婉という女」の本の話に惹かれる。1歳の時から40年の間、閉じ込められ許されて外に出た時、音だけ聞いていた川を見たいと言った。涙が頬を濡らす。読んで見たい。文学は感動するもの。「文学の一回性」なぜか、この言葉が頭から離れない。 |
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25 |
月 | 冷房もいらない爽やかな日だ。仏間の縁側の窓を全開にした。斐伊川の土手を降りて来た風が舞い込む。親戚の訪問があるとこの座敷でおもてなしをする。仏との関わりを大切にしたいからである。玄関にドスンと置かれたクーラーボックス。蓋を開けると船釣りのアジ、イサキ、カワハキが飛び跳ねてきそうな活魚だ。仲間がいて老いて趣味は大切。 |
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火 | 大山の裾野でみつけて携帯カメラに収めた名も知らない素朴な黄色い花。パソコンに保存し印刷して壁に貼った。記憶の中に仕舞い込んだ花なのか、妙に懐かしい。新聞の「四季ごよみ」でその花の写真を見つけた。…里山の登山道脇にて。花は2センチほど。名前に似ず可憐な風情―ダイコンソウ…私は再び記憶の中に仕舞う、別の名前を付けて…。 |
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27 |
水 | もう、とっくに夜は去っている。光をなくした半分の月が寂しそうにどんよりと霞んだ西の空に浮んでいた。朝日に向かって河川敷の土手を歩く。久し振りのウォーキング。一夜の花の命を燃えつくした大輪の月見草。月との逢瀬を楽しみ、絶頂のまま萎れたのか燃えるような炎の色をしていた。中洲ではキジバトのつがいのラブコール。自然は自由でいい。 |
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28 |
木 | 登山口の杉木立にツリフネソウの群落。奥出雲から吾妻山(1238m)に登る。勾配のある山路ではコケモモ、フウロ、ワレモコウ、コウリンカなどの花たち、蝉、鳥の声、谷川のせせらぎ。山登り仲間はそれらとの出会いと語らいを鋭気に比婆山稜の縦走路をひたすら歩く。急に視界が広がる。山並みに囲まれて一息。草原を渡る風と一緒にハミングする。 |
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29 |
金 | スライドで映し出された出雲大社井神郷図。鎌倉時代の本殿のイメージや建築、杵築の景観などの解説に身を乗り出して聴いた。細やかに描かれた絵図から読み取る謎解きの醍醐味。季節は実りの秋。砂山に鹿が遊び、鳥居から真っ直ぐ朱色の塀垣に囲まれた御神殿、雲棚引く弥山、稲佐の浜に漁師の姿があり、海原に帆掛け舟が浮んでいる。 |
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土 | 花火の音がする。静かな夜の空気を震わせて、遠く、近く、大きく、小さく、こだまする。終わったのかと思うと連発。趣向をこらした七夕船が街を練り歩く夏祭りの夜だ。出店の焼きそば、たこ焼き食べて、仮設のテントで生ビールを。「ご一緒に如何ですか」誰かに声を掛けて欲しい。そんな事を考えていたのに止めた。冷蔵庫の缶ビールを飲んでいる。 |
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31 |
日 | 立派な先生であるが講話中に、歴史上の人物、地名の言葉が出て来ない。老いの所為だと素直に詫びられた。途中で思い出されると話が元に戻る。そんな経験のあるシニア塾生は、胸を撫で下ろす。日曜日でもあり、若い男女の受講生もいるが、笑って頷いている。前の席で携帯の着信メロディーが鳴り出す。頭に詰め込んだ教養が白紙になった。 |