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うわっ!職業病になってんなあ、僕


東大出身広告代理店勤務・しもひがしふみあきさんのコラム


「芸者、女中、三味線」

広告屋といっても、色んな種類の仕事があります。
「打ち合わせ病」の所で少し話しましたが、営業、制作など職種も様々。
僕は偶然、コピーライターという肩書きをもらって制作部署にいるのですが、ここは遊里で言えば芸者が集まっている所。
芸風の違う芸者が多くいて、指名制で踊り(芸)を披露する。人気者の芸者もいれば、僕のように新米で全くお声のかからない芸者もいます。

「会社を遊郭に例えるなんて、不謹慎な」と思われる人もいるでしょうが、その通りです。
しかし、世の中には風俗業以外にも指名制で働く職業(タレントなどもそうですが)もあって、遊郭は例えにもってこいなのです。なので、ご勘弁を。

遊郭は当然、芸者だけでは機能しません。
ここで出てくるのが女中、三味線ひきなどです。
女中はお客に芸者を紹介したり、芸者の所までご案内する役目。つまり営業です。
さっき、芸者は指名制で〜と言いましたが、指名するのはお客(得意先)だけでなく女中(営業)も行います。
会社の中で「あ、今あいつが旬だな」ということになると、営業は自分の得意先を旬の制作スタッフの元へ連れていこうとし、お客も旬の人間を指名いていきます。

さて、もう一人忘れていました。三味線です。
三味線は、芸者が踊っている後ろで一緒に音を合わせます。芸をうまく見せるための、化粧ですね。
これがマーケティングや戦略構築といった部署です。

三味線に例えられたら、彼らは多分、いやきっと怒り出すに違いありません。なぜなら彼らの部署には、(世間で言う所の)頭のよい優秀な人間が集まっているからです。それが三味線とはどういうことだ!!ということになるはずです。
しかし、僕は三味線だと言いきります。
なぜか?

広告屋というのは、広告ブツを作るのが本来の仕事です。コンサルティングならコンサル会社に頼めばいいのです。ところが最近、広告を作るだけでは得意先から信頼もされない。そこで、こういう広告がこういう論理から必要で、なぜならこういう調査によれば…という、広告に論理を付けて得意先へ売る風潮になってきたのです。
広告ブツに論理や解釈、果てには商品開発提案までする部署。それがさっき、三味線と例えた部署です。

僕個人としては、三味線は三味線でしかない。
確かに三味線の名手と、芸者の第一人者がタッグを組めば、間違いなく素晴らしい芸、踊りが披露されるとは思います。
しかし、芸者たるもの何もなくても客を楽しませないと。

あれ?ここまで書いてきてみると、自分の部署から見た他部署への批判文章が出来上がってしまいました。
これは載せない方がいいかな…と思ったりもしますが、つまらない僕のグチを聞いてあげて下さい。なんて、最後は泣き言になってしまいました。

合掌。



「打ち合わせ病」

そういえば、僕は「広告の世界」について書いて下さいと言われていました。
なのに、ここのところ話がそれてきてしまったよう。
会社の中を話すことにしましょう。

縦に長いビルの中では、打ち合わせ病が蔓延しています。
こんな病名を聞いたら、どこかで聞いたと思う人も多いでしょうが正解です。
だらだら長く、雑談も交じり合いいつ終わるとも知れぬ会議。
最初は嫌だ嫌だと思いながらも、すぐに慣れてしまいました。

しかし、何でこんなに長いんだ?!という感想はいつまでたっても消えません。
本屋に行くと、この病気の理由について書いてある本にすぐ出会います。
詳しくは本屋へ…。

と言って今日の話を投げ出す訳にはいきません。
僕なりに考えた理由を話して終わらないと。

僕が働いている会社は特殊です。広告のことばかり考えながら暮らし、お金をもらいます。
そうこうしているうちに会社以外の人と会わないようになり、住んでいる世界はどんどん狭くなります。
営業部署の人たちは他の会社の人とのつきあいもあります。
けれど僕のいる制作部署は営業の人がもらってきた仕事をシコシコ考えて、また営業の人に得意先へ持って行ってもらう部署です。外の人とはほとんど交流しません。

となると話し相手や遊び仲間はどこに求めるのか?
同じ社員たち。ということになるのです。

かくして打ち合わせは「社交場」となります。
最近見た映画の話、うまい店の話、会社の噂…。
居酒屋でやれよ!という内容がてんこもりですが、居酒屋はダメなのです。
各自の仕事時間がバラバラでみんな一緒に飲みには行けない…。
行くとしても、それは「社交場」が終わりを告げてから。
つまり、打ち合わせは飲みに行くためのチャンスともなるのです。
嗚呼、打ち合わせ。

僕はそんな大人になりたくないと思いながら、これを書いた後も打ち合わせなる「社交場」へと出かけていきます。

企画書というドレスを着させられて…。



「面倒vsミーハー」

この前、はじめてネットで買い物をした。
扇風機。
ボタンをクリックすると、一週間くらいでブツが届き使い始める。
確か日曜の昼。
いやー、便利便利。ネット様々。
30分くらい楽しんでみるが、せっかくの休みに引きこもっているのも何だから外へ出てみた。

近くにデカい家電屋が出来たようなので、按摩をしてもらいに行く。
もちろん人ではない。マッサージチェアー。
ただで何時間でも座りながら、いくらでも揉んでくれる。
いやー、便利便利。チェアー様々。
コリもかなりほぐれたので、店内を見て回る。
エアコンコーナーの脇くらいだったろうか、扇風機が申し訳程度に置かれていた。
おっ、○ショナルのやつが品切れで入荷待ち状態だって!
知らなかったぞ。
僕が買ったのは○ャープ。おんなじのが値引きされて売ってある。

ネットはありがたい。
しかし、他のモノの売れ行きはさっぱりわからない。
お店っていうのは、まだまだ生き続けるのでしょうね。
いやはや、一週間早くこの家電屋に行ってれば…。
家に帰ってからも、新しい扇風機が妙に望まれざる子のように見えるのでした。



「職業病の一例」

最近、世間からうとくなってます。

高岡早紀の離婚を知ったのは、5日後だし、突き落とし事件も3日後でした。
新聞はなるべく読もうとするけど、テレビは中々見ない。
夜遅く帰ってきて、すぐ寝る生活をしているからそうなるだけで、いいことではありません。
ミーハーな能力が割かし要求される職場にあって、ミーハーでなくなっているというのは皮肉としか言いようがないですが、何ともしがたい。

そこでどうすれば何とか世間の流れに追いつけるかと考えました。

本屋に行って立ち読みするのは、流れというより流れの本質を理解するにはもってこいだが、少し遅い。
と、そこで職場の友人に尋ねてみたのでありました。
「おれ、ネットのニュースをチェックしてるよ」

なるほど。

毎朝かかさずに彼はチェックしているようで、そうすれば高岡早紀の離婚なんて即日に知っていたという訳です。
こう考えてみるとネットは職場で一番、サラリーマンが接している媒体かもしれません。
確かに、仕事の合間に気分転換がてらネットをパラパラ見たりするのはよくあること。
テレビが無音で流れている職場なんてのもありますが、多くはありません。
しかし、パソコンが各自のテーブルに設置してあるビルの中ではネットはもってこいの情報屋。
僕も休み休みにぼんやり見ています。

ん?待てよ。

ビルの中にたいてい生息している人々はそれでいいが、建物以外で働く人はどうしているのか?

ネットは見れません。
となると…。

ラジオしかありませんね。タクシーに乗ると、ラジオがかかっていることも多いし、トラックの運ちゃんもラジオを聞きながら運転している。

と、ここまで考えると職業病が発症してきます。
ならば、働いている人向けに広告を打つには、ネットかラジオが効果的じゃないかと。 悪い言葉を使えば、ホワイトカラー向けにはネット、ブルーカラー向けにはラジオということになる。

こんなことを思いながら、さっきもヤフーを見ながらスーツのバナー広告をクリックしている自分がいました。



「のび太くん、これからどうしよっか?」

偶然、金曜の夜に家にいた。
単に何も仕事がなかったからだけど、暇すぎてテレビをつけた。
パチパチとチャンネルを変えるのが、僕の癖。

あ、どらえもん!
子供の頃はかじりついて見ていた。
懐かしい。最近では金曜にどらえもんがあることさえ、忘れてた。

しっかし、のび太くんは成長しないなあ。
まあ、性格なんて中々変わらないから仕方ないか。

ん?ちょっと待てよ。
そもそも何でのび太くんは成長しないんだろう?
どらえもんの道具があるのに。えぇ〜っと…。
あ、それこそどらえもんの道具があるからじゃない?
いつも難問に出くわした時には、道具が出てくるけど、それがのび太くんをダメにしてるんじゃないの?

違うかな?
いや、そうだ。
自分で考えずに、いつも解決法だけ「ほらっ」って出してあげるから成長しない。
もっとどらえもんが、のび太くん自身を教育してあげればいいんじゃないかなあ。
ん?ちょっと待てよ(もう一回)
もしも、のび太くんが自立できるほど成長したら、どらえもんは要らなくなるな。
どらえもんが存在し続けるためには、のび太くんはずっと今のまま成長しない方がいいのかも。

ジレンマだ。

そういえば僕の会社は最近、広告を作ってあげる以外にもコンサルタントみたいなこともしている。
つまり、これは「僕の会社=どらえもん」ってこと?
得意先は問題を抱えてる訳だから、のび太。
そう考えれば、どらえもんなんだろう。
でも最近は、得意先が持ってくる一つの問題に答えを考えるだけじゃなく、得意先そのものの体質を改善しましょうといったことにまで、踏み込むようになっている。
のび太くんの欠点自体を変えようというのと同じだ。

さっきの「どらえもんの存在理由」の話を考えれば、これは果たして僕らの会社にとっていいことなんだろうか。

問題ある得意先が僕らの助けなく、自立できるほどの存在(ブランドかな?)になれば、僕らは用なしになるかもしれない。
根本的な問題には踏み込まず、「生かさず殺さず」を続けた方が解決すべき問題点はずっと持ってきてもらえる。

のび太くんを「教育」することは僕ら、どらえもんとしては自分の首を絞めることなのかなあ。
問題点が出てきた時だけ、都合いい道具を出しておく方が、僕らにはいいのかもしれない。

でも、のび太くんがたくましくもなってほしい。
教えて、本当のどらえもん!



「コンビニでもらったスプーン」

このコラムについて、大学でブランドを学ぶ友人から苦言。
「半分は本当で、半分は間違っている気がする」
??何のことだろう?

まあ、いいやと思って吉祥寺駅を帰っていると、ハーゲンダッツの広告。
おっ、何かエロイ臭い。
無性に食べたくなったので、そのまま帰り際にコンビニに行った。
すばやくリッチミルクを手に取り、レジへ。
「スプーンおつけしましょうか?」
「あ、はい」と言いながら店員の手元を見ると、木のスプーン。

待ってくれよ!僕は、あのハーゲンダッツのスプーンを入れてほしいのに…。
もう一度、手元を見ればハーゲンダッツのスプーンはレジ脇にちゃんとある。
それを入れてくれと言うのも恥ずかしいから、そのまま店を出た。

家に帰って木べらで食べていると、妙に違和感。
やっぱハーゲンダッツには、あのスプーンなのかなあ。
特に「こだわり」というものがあった訳ではないのに。
ポスターやCMでうまそーと思っていたけれど、いざ食べる時になったら、
コンビニで渡されたスプーンに負けちゃうのか。

ハーゲンダッツが僕の心をガシッ!!とつかむには、コンビニの店員にまでちゃんとスプーンの大事さを教えとかないといかんのかな。
ブランド研究している友達がビールを飲んでいる絵をなぜか頭に浮かんだ。
けれど、リッチミルクはうまかった。



「ルイ・ヴィトンからユニクロまで」

4月と言えば、就職活動の季節。
まあ学生たちは自分を売り込む訳だが、これが至難の技のようだ。
「売り込む」とは商品にも当てはまる言葉。
だとすると就職活動中の学生は会社側から見れば商品ということ。
面接や試験は商品テストとも言える。
学歴や資格は、一つのブランド。
東大はさだめし、ルイ・ヴィトンなのだろう。

だが、東大を出ているからといって希望通りに就職できることもない。
なぜか?
ルイ・ヴィトンといっても、その中には色んな商品があるからだ。
渋谷の女子高生が持っている月並みな鞄から、
大金持が持っているレアな鞄まである。
買い手である企業としては、レアな鞄が欲しいに決まっている。
月並みな人間は、後回しとなる。
だから、自分をレアな商品に見せるべく学生は頑張らないといけない。

前回、「化粧」の話をしたが、学生は自分の能力を化粧するのだ。
ヒッチハイクの体験を、さも自分にはバイタリティーがあるように主張する。部活に打ち込んだことを、一徹な人間だと自己アピールする。
ようは、全て「化粧」。
大体、ヒッチハイクしたのは単に金がなかったからかもしれないし、
部活に打ち込んだのは先輩が恐かったからかもしれない。

そんな学生が多い中、履歴書や試験では何の取り柄も見当たらないのに、就職できてしまう者もいる。
「何となくこいつは捨てられない」という、あいつだ。
ボロで、ブランド品でもないのに、どうも気になる持ち物が誰しもあると思うが、それは人間でも商品でも同じ。
これこそ、「化粧」の限界を意味している。



「田舎娘をプロデュース」

田舎娘という言葉を御存知だろうか。
まあ、あか抜けていない女の子のこと。
実物を見たければ、わざわざ田舎に行くことない。
大学の入学式にでも行けば、すぐ見つけられる。
かく言う小生も、学生の頃にサークルの勧誘へで出かけては、
田舎娘を目にしていた。

だがね、彼女たち、半年もすれば見違えるほどに化けてしまうのだ。
なぜ?って。
それは化粧を覚えるから。化粧とはよくできた漢字で、まさに「化ける」。
もともと顔のつくりのいい子なら、なおさらだ。
つくりが悪い子でも、化粧をしだすとかなりキレイになる。
ようは、「化粧」なのだ。

この「化粧」ってやつ、はたして人間だけにあてはまるだろうか?
スターバックスのコーヒーってだいたい300円前後する。
けど、よく考えると一杯300円とはおかしくない?
缶コーヒーなら120円で買える。
めちゃくちゃ味が変わるとも思えない。なのにこの値段の差はなぜ?
それはスターバックスが「化粧」をしているから。
スターバックスという、あの雰囲気、あのカップで出されるから300円出すのだ。
スターバックスというラベルが貼られる前のコーヒーは、田舎娘。

つまり広告やCMというのは商品に「化粧」をしてやること。
小生の仕事とは、田舎娘をきれいにしてやることなのだ。
次回は、いかに人間をブランド化するのか。
就職活動中の学生を例に話してみたい。



筆者「しもひがしふみあき」の横顔

東大法学部を卒業後、広告代理店に入社。
毎日放送デザイン大賞審査員特別賞受賞。
1981年生まれ、京都府出身。
趣味は雑貨作り。


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